いいものには物語がある。
贈ることも、受け取ることも、
その背景を知ればもっと面白い。
“Thoughtful Giving”。
それは、物語ごと贈るという新しい選び方。
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バルト海の東岸、深い森と湖に囲まれた国、リトアニア。この小さな国には、何世代にもわたって受け継がれてきた、豊かな手仕事の文化がある。リネンを織り、木を彫り、日々の暮らしに必要な道具をつくる。その営みの中で、人々は使いやすさだけでなく、愛情や願いをかたちにしてきた。 東京・白金台の東京都庭園美術館で開催される「愛を紡ぎ、祈りを刻む―リトアニアの手仕事―」は、そんなリトアニアの手仕事に光を当てる展覧会だ。 紹介されるのは、暮らしを彩る織物や木工品、信仰にまつわる彫刻など。素朴で、どこか稚拙さが残る造形の数々から、この土地に息づく独自の価値観が浮かび上がる。 愛情をかたちにする、暮らしの道具。 リトアニアの手仕事で興味深いのは、生活の道具が、人と人との気持ちをつなぐ役割も担ってきたことだ。 たとえば「ヴェルプステ」と呼ばれる、糸を紡ぐための木製の道具。かつて男性は、愛する女性のために植物や幾何学模様を彫り込んだヴェルプステを贈ったという。日常の道具ありながら、その装飾には贈る相手への想いが込められている。 また、リネンのタオルを掛けるための木製の道具にも、手間をかけた彫刻が施されている。実用性と装飾性が自然に共存するその姿は、現代のピロダクトデザインにも通じるものがある。 特別な日のための美術品ではなく、毎日の暮らしの中で使われるもの。だからこそ、人々はそこに時間をかけ、心を配ったのだろう。 ヴェルプステ(糸を紡ぐための板)1861年 国立M.K.チュルリョーニス美術館 婚礼箱 20世紀後半 リトアニア国立博物館 タオル掛け 19世紀 リトアニア国立美術館 魚形たばこ入れ 1900年 リトアニア国立博物館 森の記憶と、祈りの造形。 リトアニアの文化を語るうえで欠かせないのが、自然との深い結びつきだ。ヨーロッパで最後にキリスト教を受け入れた国のひとつであるリトアニアには、古くからの自然信仰とキリスト教が重なり合う、独特の精神文化が育まれてきた。 道端や村の入り口に立つ木製の十字架、祈りのためにつくられた聖像。そこに施された太陽や植物などの装飾には、自然への畏敬と、人々の願いが映し出されている。 とりわけ木彫の造形は興味深い。素朴な素材を用いながら、彫りの深さや輪郭、装飾のリズムによって、それぞれに異なる表情を生み出している。 長い歴史の中で、幾度も政治的な支配や文化的な抑圧を経験してきたリトアニア。手仕事は、暮らしを支える技術であると同時に、自分たちの文化を守り伝える手段でもあった。 悩めるキリスト 19世紀 国立M. K. チュルリョーニス美術館 夜明けの門の聖母 19世紀 国立M. K. チュルリョーニス美術館 アール・デコと手仕事。異なる価値観が出合う場所。 そして今回、もうひとつ注目したいのが展覧会の舞台だ。会場となる東京都庭園美術館の本館は、1933年に竣工した旧朝香宮廷。フランスのアール・デコを取り入れた建築と室内装飾で知られ、細部に至るまで当時の美意識が息づいている。 一方、リトアニアの手仕事は、名もな気職人や暮らしを営む人々によって育まれてきたもの。 アール・デコの空間でリトアニアの手仕事を眺めることは、ものの価値を、いつもとは少し違う角度から見つめ直す機会にもなりそうだ。 尊いものは、必ずしも特別な場所から生まれるわけではない。 誰かのために彫った木の模様や、時間をかけて折り上げた一枚の布。そんな小さな営みの積み重ねが、やがて一つの文化になっていく。 この冬は、遠いリトアニアの暮らしに思いを馳せながら、手仕事の静かな造形に触れてみたい。 _______________ INFORMATION 愛を紡ぎ、祈りを刻む―リトアニアの手仕事― 会期:2027年1月16日(土)〜3月28日(日) 会場:東京都庭園美術館(本館・新館)...
イタリアのユーモアとオペラ美学―ロッシーニ 喜歌劇『イタリアのトルコ人』の魅力
イタリアに息づく、日常の何気ない瞬間を楽しむというライフスタイルから、日々を少しハッピーに彩るコトやモノをご紹介している連載のVol.4では、オペラ『イタリアのトルコ人(Il Turco in Italia)』から、作品の魅力と、日常そのものが芸術へと昇華するイタリア独自のオペラ文化を考察します。 舞台の中で始まるもう一つのオペラ 『イタリアのトルコ人(Il Turco in Italia)』は、 若きジョアキーノ・ロッシーニが22歳で書いたオペラ・ブッファ(喜歌劇)で、 初演時には評価は高くなかったようですが、現代では「隠れた名作」として高く評価されています。 物語の構造、人物の心理描写、そしてロッシーニらしいアンサンブルの妙が光り、オペラ・ブッファが進化する過程で投げかけられた変化球の作品としても一目置かれている作品です。 (c)Koji Iida/New National Theatre, Tokyo この作品のもう一つの魅力は、劇中に劇がある「メタオペラ」構造です。登場人物の一人、詩人プロスドーチモが 「喜劇を書くための題材が見つからない」と嘆きながら登場し、 目の前で起こる、人間模様を“作品の素材”として観察し始めます。 観客はこの詩人と同じ視点で物語を眺めることになり、 オペラ自体が「オペラの作られ方」を描く構造になっています。 (c)Koji Iida/New National Theatre, Tokyo 庶民のドラマが主役になるとき――オペラ・ブッファの魅力 物語はナポリ近郊の海辺。主人公の気まぐれで奔放なフィオリッラは、どこか頼りないが憎めない夫ジェローニオとの変わり映えしない日々に少し疲れている女性。 そんな彼女の前に、ナポリの港へ華やかに現れるのが、どこか危うい魅力を放つトルコの王子セリム。二人がふと視線を交わした瞬間から、夫のジェローニオ、セリムへの想いを捨てきれない元恋人のザイダ、さらにフィオリッラを慕うナルチーゾまで巻き込み、恋の糸はゆっくり、そして見事に絡まり始める。...
何十年経っても、格好いい。ディーター・ラムスが教えてくれる「良いデザイン」のこと。
ドイツの家電メーカー〈ブラウン〉の名作を生み出した、ディーター・ラムス。彼のデザイン哲学に触れる日本初の公式巡回展が、東京・上野毛で開催される。 昔のブラウンのラジオやオーディオを見て、「これ、今でも欲しいな」と思ったことはないだろうか。無駄のないフォルムに、整然と並んだボタン。何十年も前の製品なのに、ちっとも古く見えない。むしろ、今のものより新鮮に感じることさえある。そんなプロダクトを数多く生み出したのが、ドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスだ。 彼が掲げたのは、「Less, but Better(より少なく、しかしより良く)」というデザイン哲学。 ただシンプルにすればいい、という話ではない。使う人のことを考え、必要な機能を見極め、余計なものを削ぎ落とす。その先に生まれる美しさこそ、ラムスが追い求めたものだった。 そんな彼の仕事をじっくり見られる公式巡回展が、11月17日から多摩美術大学の新ギャラリー〈Sala Blu〉で開催される。しかも日本初。 会場には、ブラウンの名作プロダクトをはじめ、スケッチや図面、プロトタイプなどが集結。完成されたデザインの美しさはもちろん、ひとつのアイデアが製品になるまでの思考のプロセスを辿ることができる。 travel 1000 Model for a miniaturised world receiver 1978 Photo: Andreas Kugel © rams foundation SK 4 – Mono radio-phono combination with...
100年経っても、未来の話。星新一をもう一度読んでみる。
たった数ページなのに、読み終わったあと、世界がちょっと違って見える。星新一のショートショートには、そんな不思議なところがある。
『ボッコちゃん』『おーい でてこーい』『きまぐれロボット』。タイトルを見て「あ、学校で読んだ」と思った人もいるかもしれない。そんな人にこそ、大人になった今、もう一度読んでみてほしい。
2026年は、星新一の生誕100年。それを記念して、新潮文庫から『きまぐれカプセル』が刊行された。新聞や雑誌、企業のPR誌や会報などに書いた文章から、これまで書籍や文庫に収録されていなかったエッセイ91編をセレクト。さらにショートショート3編を加えた一冊だ。
ところで、星新一ってどんな人?
1926年、東京生まれ。本名は星親一。
東京大学農学部農芸化学科を卒業し、父が創業した製薬会社で一時社長を務めた。つまり最初から文学青年として作家を目指していた人、というわけではない。
そして1950年代、空飛ぶ円盤研究会に入会する。なんとも星新一らしい入口だ。そこからSFの世界と出会い、1957年には日本初期のSF同人誌「宇宙塵」の創刊に参加。作品が江戸川乱歩の目に留まり、作家への道が開けていく。
後に星新一の代名詞となったのが、「ショートショート」だった。短い。文章もシンプル。登場人物の細かなプロフィールや、情緒的な風景描写もほとんどない。その代わりに出てくるのは、ロボット、宇宙人、薬、会社、広告、便利な機械。
未来の道具を次々と登場させながら、星新一が観察していたのは、どうやら未来そのものではなく、それを手にした人間のほうだった。欲張ったり、怠けたり、騙したり、便利さを追い求めすぎたり。未来になっても、人間は案外変わらない。そこが面白い。
1983年には、自ら目標に掲げていたショートショート1001編を達成。『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『悪魔のいる天国』『妄想銀行』など、今も読み継がれる作品を残した。
未来を書いたのに、古くならない。
星新一を今読むと、ときどきドキッとする。
便利になりすぎた社会。人間の代わりに働く機械。情報に振り回される人々。効率を追いかけた結果、妙なところへ辿り着いてしまう世界。もちろん、スマートフォンも生成AIもない時代に書かれた物語だ。なのに、「これ、今の話じゃない?」と思ってしまう。
未来を正確に予言したから、というだけではない。テクノロジーが変わっても、その前で右往左往する人間の欲望や滑稽さは、それほど変わらない。星新一はそこだけを、まるで実験室で不純物を取り除くように抽出して物語にした。農芸化学を学んだ人だから、と言ったら少し出来すぎだろうか。
余計なものがない。だから古びない。ショートショートという小さな器の中に、人間という生き物の妙な性質が、標本みたいにきれいに収まっている。
100年目に見つかった、知らない星新一。
そんな星新一の生誕100年に刊行されたのが、『きまぐれカプセル』。面白いのは、単なるベスト作品集ではないところだ。
空飛ぶ円盤に熱中した理由。5000年後へ送るタイムカプセルに何を入れるか。江戸川乱歩や小松左京、和田誠との交流。幼少期から晩年まで、本人が自分について書いた文章を時系列で読むことができる。つまりこれは、ちょっと変わった「星新一の自伝」でもある。
さらに気になるのが、今回収録された3編のショートショート。なかでも「聖地」は、生誕100年となる2026年、遺品のなかから下書きの状態で発見された未発表作だ。次女の星マリナさんによれば、比較的大きな字で書かれていることから、かなり初期の作品と考えられるという。
そして、そこに登場するのが、「なんでもできるけれど、電気代がかかる」存在。AIの消費電力が話題になる2026年にこれが出てくる。出来すぎた話みたいだけれど、本当の話だ。
表紙を飾るのは、盟友・真鍋博
装画は、星作品のイラストを初期から数多く手がけた真鍋博(1932〜2000)が担当した。『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』など、初期から数多くの星作品の装画を手がけた盟友だ。
シャープな線、機械、都市、未来。少しユーモラスで、少し不穏。星新一の乾いた文章と真鍋博のグラフィックは、いま見ても驚くほど相性がいい。新刊なのに、どこか古いSF文庫を古本屋で見つけたような感じがするのは、そのせいかもしれない。本というのは文章だけでできているわけじゃない。装丁も含めて記憶に残る。そんなことまで思わせてくれる一冊だ。
100年前に生まれた人が、半世紀以上前に考えた未来。そこに、AIと暮らす2026年の僕たちがいる。
数ページ読んだあと、スマートフォンやAIや、便利すぎる毎日の景色が、ほんの少し違って見えるかもしれない。
_______________
INFORMATION
『きまぐれカプセル』星新一 著新潮文庫2026年8月28日発売エッセイ91編+ショートショート3編収録URL: https://www.shinchosha.co.jp/book/109855/
『いつでもいま – ガラスに映す光』柿本ケンサク写真展、代官山ヒルサイドで開催
写真家・映像作家の柿本ケンサクが、ガラス作家・三嶋りつ惠の作品を「光を描くためのレンズ」として撮影した新作「Hikari」シリーズを発表する。 『いつでもいま – ガラスに映す光』柿本ケンサク写真展は、9月23日から10月4日まで、代官山ヒルサイドテラス・ヒルサイドフォーラムで開催。柿本氏にとって代官山は、写真家としての活動をスタートさせた場所でもある。2016年の『TRANSLATOR』、2021年の『TRANSFORMATION』に続き、今回で3度目の展示となる。 今回、柿本氏が対峙するのは「ガラス」だ。ヴェネツィアと京都を往復しながら制作を続けるガラス作家・三嶋りつ惠。ムラーノ島の職人技を受け継ぎながら、無色透明の中に光の輪郭だけを描き出す、あの独特の存在感を持つ作品群である。 柿本氏は三嶋氏のガラス10点を、レンズのように用いた。数ミリ単位でガラスの位置をずらし、角度を変え、通過する光を捕まえる。目の前の風景を「写す」のではなく、光そのもの、そして偶然と対話しながらシャッターを切る。だから写真には、その日の空気、季節の匂い、撮影者の身体の揺れまでもが、痕跡として刻み込まれることになる。 写真は光を固定する。ガラスは光を揺らす。 新作『Hikari』シリーズ ©Kensaku Kakimoto ©Kensaku Kakimoto ©Kensaku Kakimoto ガラスによって屈折し、揺らぎ、輪郭を変える光。そこには、風景そのものだけでなく、その場に流れる時間や季節の空気、身体の揺れ、ガラスの個体差までが痕跡として残る。 「固定」と「流動」、「定着」と「融解」。 異なる性質を持つ写真とガラスを重ねることで、柿本氏がこれまで向き合ってきた「時間」と「記憶」が、より感覚的な像として立ち上がる。 透明なガラスは、何もないように見えて、光を受け止めることで初めてその存在をあらわにする。そのガラスを通過した光を、今度は写真が固定する。揺らぐ光が一瞬だけ像になり、その像がまた見る人の記憶のなかで揺らぎ始める。タイトルの『いつでもいま』が示すのは、そんな一瞬と永続のあいだなのかもしれない。 三嶋りつ惠氏によるガラスレンズ作品「キンギョレンズ」 会場では「Hikari」シリーズの写真作品に加え、三嶋氏による「タマレンズ」「キンギョレンズ」などのガラスレンズ作品も展示。 会期中の10月3日には、柿本氏と三嶋氏によるトークイベントも予定されている。写真を通して光の一瞬を捉える柿本氏と、透明なガラスを通して光をかたちにしてきた三嶋氏。二人が語る「光」と「時間」は、聞き逃せない。 さらに南青山のLUMIX BASE TOKYOでは、同時期に連動展『いつでもいま』を開催。LUMIX L10で撮影された、ヒルサイドフォーラムとはまた異なる柿本氏の眼差しに出会える。ハシゴして訪れる価値は、十分にある。 _______________ INFORMATION 『いつでもいま – ガラスに映す光』柿本ケンサク写真展 会期:2026年9月23日(水・祝)- 10月4日(日)12:00 - 19:00 ※最終日11:00...
名画は、見るほどに面白くなる。500点の傑作を読み解く『完全解読 世界の美術』
美術館で名画を前にして、さて、どこを見ればいいのだろう。 色なのか、構図なのか。描かれた人物の表情なのか。もちろん、ただ眺めるだけでも絵は楽しいのだが、その一枚に隠された意味や時代背景を少し知るだけで、それまで見えていなかったものが、ふっと浮かび上がってくることがある。 そんな「見るための目」を育ててくれる一冊が登場した。 英国の出版社DK社による『完全解読 世界の美術』。洞窟壁画からルネサンス、印象派、北斎、そして現代のグラフィティ・アートまで。古今東西500点以上の作品を、512ページの大ボリュームで紹介する美術書だ。 名作を、細部から読み解く。 この本の面白さは、単なる美術史の図鑑ではないところにある。 作品を大きな図版で見せながら、ある部分へぐっとフォーカスする。なぜこの色が使われているのか。この人物は誰なのか。画面に描き込まれた小さなモチーフは何を意味するのか。構図にはどんな仕掛けがあるのか。 一枚の作品を部分から読み解いていくことで、知っているつもりだった名画が、まったく違う顔を見せはじめる。 フェルメールも、ダ・ヴィンチも、ゴッホも、北斎も。作品についての知識を増やすというより、自分の目で発見するためのヒントをもらう。そんな感覚に近い。 本書P132~P133より 本書P467より 西洋美術だけではない、世界の美術史。 本書P275より もうひとつ、この本で注目したいのが、その視野の広さだ。 いわゆる西洋美術の名作だけでなく、日本を含むアジア、アフリカ、中南米の作品や、これまで美術史の中心では十分に語られてこなかった女性芸術家たちも数多く登場する。 先史時代から現代までを辿る章立ても、地域をひとつの中心から眺めるのではなく、同じ時代に世界のあちこちで生まれていた表現を並べて見せてくれる。 たとえば、ルネサンスの隣にはアステカ文明やベニン王国、明代の絵画や雪舟・狩野派がある。 美術史を一本の線として覚えるのではなく、世界各地で同時進行していた文化の地図として眺めてみる。そんな読み方ができるのもいい。 例えば、風景画だけを時代を超えて見てみる。 本書P322~P323より さらに面白いのが、時代や地域とは別に設けられたテーマ展示。 自画像、風景画、静物画、神話画、動物画、戦争画など、共通するテーマを持つ作品を時代横断で並べている。 年代順に美術史を追うのとは違い、同じモチーフが場所や時代によってどう変化したのかを比較できる。自宅で小さなキュレーション展を開くような楽しさだ。 「名作が名作である理由」 本書P492~P493より 巻末には300人以上の芸術家プロフィールも収録。 気になる作家を調べたり、展覧会へ出かける前に予習したり、見てきた作品について帰宅後にもう一度ページを開いたり。辞書のように使うこともできれば、休日にコーヒーを飲みながら、気の向くままページをめくる画集にもなる。 先日逝去された評論家の山田五郎さんは本書について、美術史だけでなく、なぜ名作が「名作」とされるのかを学べる一冊として推薦コメントを寄せている。 美術に詳しくなるため、というよりも、美術を自分の目でもう少し面白く見るために。 一生ものの鑑識眼は一日では手に入らないが、その入口はこの一冊で開く。...
Columns
海の中に沈むレストラン──唯一無二の食体験
太陽が戻ってきたものの、気まぐれな空を眺めながら、ふと夏の日差しが恋しくなる季節です。そんな気分を紛らわせてくれるのが、海好きの私にとって最高のヴァカンスとなった今夏のモルディブ旅。その中でも、滞在した島のリゾートに併設されていた、とびきり素敵な体験ができるレストランについて綴らせていただきますね。 暫しお付き合いのくださいませ。 Hurawalhi Island Resort 約15年ぶりに叶ったモルディブ再訪。透き通る海と、色鮮やかな熱帯魚が泳ぐ最高なロケーション。海を眺めているだけで心がほどけていく、そんな癒しに満ちた島です。 今回滞在したのは、マーレ空港から水上飛行機で約40分。モルディブ・ラヴィヤニ環礁に佇む Hurawalhi Island Resort です。 幸運なことに、このリゾートには海中レストランがあり、まるで海の中へ溶け込むような、特別な時間を味わうことができました。 水深5.8メートルという非日常の世界でコース料理を楽しめる、唯一無二の体験型レストラン──それが「5.8 Undersea Restaurant」です。 月光と海の下に佇む海中レストラン レストランの入り口をくぐると、まずスタッフからこの海中レストランの成り立ちや構造についての説明があり、これから始まる特別な体験への期待が静かに高まっていきました。 螺旋階段をゆっくりと降りていくと、足元のガラス越しに海中へと潜っていく感覚が視覚的に伝わってきて、まるで自分自身が海の世界へ吸い込まれていくようでした。 そして、レストランに到着した瞬間、目の前に現れたのは、まるでプライベートな水族館のような空間。360度ガラス張りのドームに包まれたその場所は、言葉を失うほど幻想的でした。 「5.8 Undersea Restaurant」 ガラスのすぐ向こうには、サンゴ礁が広がり、カラフルな熱帯魚たちが泳ぎ回る姿が手に取るように見える。その美しさは、写真や映像では伝わらない、圧倒的な迫力。ただ静かに眺めているだけで、時間の感覚さえ薄れていくようでした。 あまりの光景に息をのんでしまい、しばらく言葉が出ずにただ見とれてしまったのは言うまでもありません。そこに広がっていたのは、世界最大規模のオールガラス構造を誇る海中レストラン。 その名の由来は、まさに海面下5.8メートルに静かに佇んでいることから。“ガラスレストラン”と呼ばれることもあるようですが、実際にはニュージーランドの M.J. Murphy Ltd によって設計され、約400トンもの巨大アクリル構造を海中へ沈めて造られた、本格的な海中建築。ただの“海の中のレストラン”ではなく、海そのものに包まれながら食事をするという、世界でも類を見ない空間です。 海面からこぼれる光がつくる、幻想的な瞬間...
「そのままでいいと思えた時」
これまでのコラムで、 植物のことや、整えるという感覚について書いてきました。 急がせないこと。 足しすぎないこと。 無理をさせないこと。 そんな考え方は、 日々のサロンワークの中で 少しずつ形になってきたものです。 今も毎日、 たくさんのお客様と向き合っています。 以前よりも、 むしろ働いている時間は長いかもしれません。 ただ、 仕事の密度は変わりました。 日々たくさんの方と向き合いながらも、 一人ひとりの髪との関係は、 以前よりも深くなっているように感じます。 その違いは、 自分の中ではとても大きなものです。 バッキンガム宮殿の近くの公園 美容師になると決めたとき、 私は日本のサロンには就職せず、 ロンドンに渡りました。 ヴィダルサスーンで学びながら、...
「人生に凛として息づく“経験”というレガーロ」
2月も気づけばもう中旬。 そして今年は、ミラノとコルティナという2つの都市が舞台となる、特別なオリンピックの2月でもあります。 イタリアでの開催というだけで、競技そのものはもちろん、街並みや観客席に映るイタリアの人々の姿に、どこか懐かしさが重なり、いつもより心の距離が近く感じられるのは不思議です。 そんな中で迎えた開会式。 あまりの美しさに息をのむほどで、胸の奥がじんわりと熱くなるような時間でした。今日は、そのエモーショナルな余韻を少し綴らせてください。 歴史、芸術、モード、そしてイタリアのパッション。 イタリアという国が持つ独自の魅力――いわゆる Italianity(イタリアニティ)――が、細部にまで散りばめられた開会式。どの瞬間を切り取っても絵画のように美しく、これほどまでに心を奪われた開会式は、私にとって初めての体験でした。 テーマは「Armonia(ハーモニー)―調和」。 今の世界情勢にそっと問いかけるような言葉であり、演出そのものがそのテーマを静かに、しかし力強く語っているように感じられました。 イタリアでのオリンピックだからこそ、心に響くものがあったのかもしれません。 美しさと情熱が溶け合うあの光景は、きっと長く記憶に残り続ける気がします。 via: Armani "Omaggio al Sig. Armani alla Cerimonia di Apertura dei Giochi Olimpici Invernali Milano Cortina 2026" 開会式の中でも、ひときわ心を奪われたシーンがありました。 イタリア国旗の“緑・白・赤”を基調にした「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のパンツスーツを纏った60人のモデルたちが、色ごとに整然と並び、国旗を届けるモデルのヴィットリア・チェレッティを先導して歩く姿。...
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LIfT オーナーヘアスタイリスト
BAMBI.
日本で美容師免許を取得後、ピーターグレイ氏に師事し、アシスタントとしてロンドンで経験を積んだ後、帰国。都内の某有名大型サロンで11年間働いた後、表参道に2席のみの美容室をオープンする。
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イラストレーター / テキスタイルデザイナー
AOKI CHIE
(aotché design)
95年に渡仏。パリ服飾学校スタジオベルソー卒業後、マルティーヌ・シットボン、ランバン等のメゾンでレザーグッズデザイナーとして勤務。
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JAZZY DOG / JAZZY DOG LIFE 代表
tomoki kobayashi
猟犬の保護犬リンリンを家族に迎えたことをきっかけに犬について学び始め、「スタディ・ドッグ・スクール認定ドッグトレーナー」、「米国CCPDT認定ドッグトレーナー(CPDT-KA)」を取得。2018年から放棄された犬たちの保護・譲渡活動をスタート。
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TRUNK by KITAZAWA レイティエ(トランク職人)
Yu Kitazawa
物作りの一家に生まれ、欲しいものは自分で作っちゃえ、という環境で幼少期を過ごす。10代の頃より革製品を作りはじめ、学生時代よりイタリア、フィレンツェの工房で革の技術を磨く。
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modus vivendi 代表
橋口 麻紀
イタリアのアイウエアカンパニーのラグジュアリーブランドのコミュニケーション、マーケティングを経て、ブランディングを主としたmodus vivendi(モードゥス ヴィベンディ)株式会社を2006年に設立。
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ブランドビジネスコンサルタント / 株式会社モアサマー 代表取締役
稲田 元彦
1966年生まれ東京都出身ファッションビジネスを営む家に生まれ、美術を学び、ブランドを産んで育てる仕事をしてきました。音楽や映画、サブカルチャー好きの自称オタクです。
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