いいものには物語がある。
贈ることも、受け取ることも、
その背景を知ればもっと面白い。
“Thoughtful Giving”。
それは、物語ごと贈るという新しい選び方。
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美術館で名画を前にして、さて、どこを見ればいいのだろう。 色なのか、構図なのか。描かれた人物の表情なのか。もちろん、ただ眺めるだけでも絵は楽しいのだが、その一枚に隠された意味や時代背景を少し知るだけで、それまで見えていなかったものが、ふっと浮かび上がってくることがある。 そんな「見るための目」を育ててくれる一冊が登場した。 英国の出版社DK社による『完全解読 世界の美術』。洞窟壁画からルネサンス、印象派、北斎、そして現代のグラフィティ・アートまで。古今東西500点以上の作品を、512ページの大ボリュームで紹介する美術書だ。 名作を、細部から読み解く。 この本の面白さは、単なる美術史の図鑑ではないところにある。 作品を大きな図版で見せながら、ある部分へぐっとフォーカスする。なぜこの色が使われているのか。この人物は誰なのか。画面に描き込まれた小さなモチーフは何を意味するのか。構図にはどんな仕掛けがあるのか。 一枚の作品を部分から読み解いていくことで、知っているつもりだった名画が、まったく違う顔を見せはじめる。 フェルメールも、ダ・ヴィンチも、ゴッホも、北斎も。作品についての知識を増やすというより、自分の目で発見するためのヒントをもらう。そんな感覚に近い。 本書P132~P133より 本書P467より 西洋美術だけではない、世界の美術史。 本書P275より もうひとつ、この本で注目したいのが、その視野の広さだ。 いわゆる西洋美術の名作だけでなく、日本を含むアジア、アフリカ、中南米の作品や、これまで美術史の中心では十分に語られてこなかった女性芸術家たちも数多く登場する。 先史時代から現代までを辿る章立ても、地域をひとつの中心から眺めるのではなく、同じ時代に世界のあちこちで生まれていた表現を並べて見せてくれる。 たとえば、ルネサンスの隣にはアステカ文明やベニン王国、明代の絵画や雪舟・狩野派がある。 美術史を一本の線として覚えるのではなく、世界各地で同時進行していた文化の地図として眺めてみる。そんな読み方ができるのもいい。 例えば、風景画だけを時代を超えて見てみる。 本書P322~P323より さらに面白いのが、時代や地域とは別に設けられたテーマ展示。 自画像、風景画、静物画、神話画、動物画、戦争画など、共通するテーマを持つ作品を時代横断で並べている。 年代順に美術史を追うのとは違い、同じモチーフが場所や時代によってどう変化したのかを比較できる。自宅で小さなキュレーション展を開くような楽しさだ。 「名作が名作である理由」 本書P492~P493より 巻末には300人以上の芸術家プロフィールも収録。 気になる作家を調べたり、展覧会へ出かける前に予習したり、見てきた作品について帰宅後にもう一度ページを開いたり。辞書のように使うこともできれば、休日にコーヒーを飲みながら、気の向くままページをめくる画集にもなる。 先日逝去された評論家の山田五郎さんは本書について、美術史だけでなく、なぜ名作が「名作」とされるのかを学べる一冊として推薦コメントを寄せている。 美術に詳しくなるため、というよりも、美術を自分の目でもう少し面白く見るために。 一生ものの鑑識眼は一日では手に入らないが、その入口はこの一冊で開く。...
アフリカ黒檀に刻まれた、名もなき人々の物語。マコンデ美術館「ビナダム展」
三重・伊勢の小さな美術館で、この秋、静かに熱を帯びた企画展が幕を開ける。テーマは「人間」。それも、英雄でも神でもない、ごくふつうの人々の暮らしだ。
タンザニアのマコンデ族が手がける木彫芸術といえば、精霊「シェタニ」に代表される抽象的でうねるようなフォルムを思い浮かべる人が多いかもしれない。だが今回、マコンデ美術館が光を当てるのは、その対極にあるもうひとつの系譜「ビナダム」だ。
スワヒリ語で「人間」を意味するこの言葉が指し示すのは、畑を耕す人、重い荷を背負って歩く人、顔を寄せ合って言葉を交わす人々。神話的な物語ではなく、東アフリカの大地に根ざした、ごく日常的な営みのひとこまである。
重厚なアフリカ黒檀という素材から力強く、そして大胆に彫り出されたそれらの人物像には、無骨さの奥に確かな体温が宿る。彫刻家たちが人間の暮らしそのものへ向けた、どこか慈しみを帯びたまなざしが、木肌の陰影の中に静かに息づいている。
シェタニの作品群がマコンデ彫刻の「幻想」の側面だとすれば、ビナダムは「現実」の側面。同じ木から生まれた、まったく異なる二つの世界観を知ることで、マコンデ彫刻という表現の奥行きがより立体的に見えてくるはずだ。
遠く離れたアフリカの大地に生きた人々の逞しさは、時代や国境を越えて、見る者の胸をふと打つ。技術と想像力によって命を吹き込まれた木の彫像たちに、会いに行きたい。
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INFORMATION
マコンデ彫刻 ビナダム展 ―アフリカに生きる人々の姿―
日程:2026年11月21日(土)〜2027年2月14日(日)休館日:火曜日、12月31日(木)〜1月2日(土)会場:マコンデ美術館住所:三重県伊勢市二見町松下1799-4公式サイト:https://museum.makonde.jp/exhibition/
About the Museum
マコンデ美術館 —見て、触れて、感じる彫刻の美術館。
前館長・水野恒男氏が長年にわたり蒐集した2,000点を超えるマコンデ彫刻コレクションのうち、約400点を常設展示。ティンガティンガ絵画やアフリカの民族資料も合わせて紹介しており、アフリカの大地が育んだ生命力あふれる造形と出会える場所だ。
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この秋、恋はナポリの港からやってくる。ロッシーニの洒脱な喜劇『イタリアのトルコ人』
新国立劇場の新シーズンは、ロラン・ペリー演出『イタリアのトルコ人』から。 恋をしたい妻と、異国からやってきたプレイボーイ。振り回される夫に、忘れられない元恋人。まるで少し昔の恋愛映画のような人間模様を、ロッシーニは軽やかな音楽とユーモアで描いた。 新国立劇場の2026/2027シーズンを開くのは、ロッシーニのオペラ・ブッファ『イタリアのトルコ人』。『セビリアの理髪師』ほど広く知られてはいないけれど、恋の駆け引きと洒脱なアンサンブルに満ちた、知る人ぞ知る喜劇だ。 今回、とりわけ注目したいのがロラン・ペリーの演出。 19世紀のオペラが、20世紀のポップカルチャーへ ©Javier del Real | Teatro Real 遊び心とスパイスの効いたセンスで、上演のたびに話題をさらってきた彼が今回選んだモチーフは、イタリア発祥の"フォトノベル"。1950年〜1970年にかけて人気を博した、写真と吹き出しで綴られるメロドラマ風の恋愛小説だ。 舞台では、結婚生活に退屈しロマンス小説に夢中になるヒロイン、フィオリッラの空想と現実が入り混じる。登場人物たちは二次元の物語へ入り込み、また現実へと戻ってくる。 19世紀に書かれたオペラが、20世紀のポップカルチャーを経由して、現代の舞台へ。そんな少し奇妙な時間旅行こそ、このプロダクションのおもしろさかもしれない。 演出・衣裳を手がけるロラン・ペリー、美術のシャンタル・トマによって、作品世界がどのような色彩とフォルムで立ち上がるのかにも注目したい。 恋のゲームは、ナポリから。 ©Javier del Real | Teatro Real 物語の舞台はナポリ。 物語の主人公フィオリッラは、夫ジェローニオとの単調な毎日にうんざりしている女性。そこへナポリの港に降り立つのが、プレイボーイのトルコ王子セリム。二人の視線が絡んだ瞬間から、堅物の夫ジェローニオ、セリムに未練を残す元恋人ザイダ、さらに彼女を慕うナルチーゾまで加わり、恋模様は見事なほどにもつれていく。 そして、その騒動を少し離れたところから眺めているのが、詩人プロスドーチモ。彼はこの騒動を「上出来な喜劇のネタ」とほくそ笑みながら、陰でそっと糸を引いていく。 恋愛喜劇でありながら、物語をつくることそのものを遊んでしまう。そんな知的ないたずらも、ロッシーニならではの魅力だ。 旬の歌い手たちが揃う、この上ない顔合わせ ヒロイン、フィオリッラを歌うのは、24/25シーズン《夢遊病の女》に彗星のごとく登場し、一夜にして評判をさらったソプラノ、クラウディア・ムスキオ。相手役のセリムには、パリ・オペラ座やロッシーニの聖地ペーザロで活躍する若手、アレハンドロ・バリニャス・ビエイテス。そして夫ジェローニオ役には、ブッフォ(喜劇的な役どころ)の世界的名手パオロ・ボルドーニャが名を連ねる。 指揮台に立つのは、イタリアの俊英アレッサンドロ・ボナート。「Forbes Italia」誌が選ぶ2025年「世界を変える30歳未満」にも名を連ね、今夏のロッシーニ・オペラ・フェスティバルでもみずみずしい音楽性で喝采を浴びたばかりの逸材だ。 軽快なリズム、華やかなアンサンブル、登場人物たちのすれ違いを彩るロッシーニの音楽を、どのように舞台上で躍動させるのかにも期待が高まる。 ©Javier del Real |...
「ディーヴァ」、世界を巡り、東京へ。歌声が紡いだ200年の物語
ひとつの歌声が、人々の心を動かし、社会の風景を変えることがある。 19世紀のオペラ歌手から、ハリウッド黄金期のスター、現代のポップアイコンまで。「ディーヴァ」と呼ばれてきた表現者たちは、類まれな才能と存在感によって観客を魅了すると同時に、時代が定めた女性像や、性、人種をめぐる境界にも挑み続けてきた。 そんなディーヴァの歴史を、19世紀から現代まで約200年にわたってたどる展覧会「DIVA」が、東京にやってくる。英国が誇るヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)が手がけた本展は、アジアで唯一、そして世界巡回の掉尾を飾る舞台に東京を選んだ。会場は、国立新美術館。会期は2027年3月24日から7月19日まで。 マリア・カラスの気高い佇まい、マリリン・モンローの儚さ、レディー・ガガの反逆、ビョークの静謐なる詩情。時代も国境も超え、その声と存在そのもので世界を魅了してきた約100名のディーヴァたちの軌跡を、約280点の貴重な衣装と資料でたどる、かつてない規模の回顧展だ。 本展の大きな見どころは、約280点におよぶ衣装や資料。 なかでも注目したいのが、マリア・カラス、マリリン・モンロー、アデル、レディー・ガガ、エルトン・ジョン、リアーナ、ビョークらが身につけた伝説のステージ衣装、約60点。スターが舞台で一度だけまとったドレス。その人のイメージを決定づけた、あまりにも有名なスタイル。V&Aの至宝に、個人が秘蔵してきた逸品を加え、写真、映像、ポスター、LPと共に、彼女たちの神話を紡ぎ直す。日本展限定の展示も見逃せない。 華やかな衣装や音楽の背後にあるのは、社会の大きな変化だ。男性中心の価値観が支配していた時代に、女性やクィアの表現者たちは、どのようにして自らの声を獲得していったのか。本展では、時代ごとに姿を変えてきたディーヴァという存在を、フェミニズムやジェンダーの視点から捉え直す。ディーヴァとは、単なる歌姫を意味する言葉ではない。それは、自分自身の存在と表現を武器に、社会の常識を書き換えてきた人々の物語でもある。 サラ・ベルナール、「ジャンヌ・ダルク」のポスター | © Victoria and Albert Museum, London 展示は大きく2つの章で構成される。 第1幕|ディーヴァの誕生 アデリーナ・パッティ、サラ・ベルナール、イサドラ・ダンカン、マレーネ・ディートリッヒ、ジュディ・ガーランド、マリア・カラス、マリリン・モンロー、エリザベス・テイラー...。 オペラの黄金時代からハリウッドの黄金期、そしてその黄昏へ。圧倒的な歌声や美貌、個性、そしてスター性を武器に、女性たちが「ディーヴァ」という神話を築いていった時代をたどる。 第2幕|ディーヴァの再生・復活 ニーナ・シモン、アレサ・フランクリン、ドリー・パートン、グレイス・ジョーンズ、マドンナ、ホイットニー・ヒューストン、ビョーク、ビヨンセ、レディー・ガガ、リアーナ、アデル、ビリー・アイリッシュ...。 第2波フェミニズム以降、ディーヴァの意味は大きく変わっていく。社会から与えられた役割を演じるのではなく、自らの声と身体、ファッション、音楽を通して「自分は何者なのか」を表現する。自由を求め、既成概念を打ち破り、ときに社会そのものに問いを投げかけてきた表現者たち。 その系譜は、現代のポップ・カルチャーへと確かにつながっている。 『椿姫』でヴィオレッタ役を演じるマリア・カラス(1958 年) Houston Rogers © Victoria and Albert Museum, London...
「香雅堂」山田悠介さん×「NOSE SHOP」中森友喜さん対談|足し算の香水、引き算の香道 ⸺ 香りの東西、初めての対話
伝統的な香道の世界で香木を扱う「香雅堂」の山田悠介さんと、世界のニッチフレグランスを紹介するセレクトショップ「NOSE SHOP」の中森友喜さん。同じ「香り」を展開しながら、これまで交わることのなかった二人が、香木を聞き、香水をテイスティングしながら語り合った。温度、言葉、希少性、そして煙⸺。二つの香りの世界の違いと、意外なほど深い共通点が見えてきた。 香道×ニッチフレグランス、直接出会わなかった二つの「香り」 ―香道もニッチフレグランスも、知る人ぞ知る世界ですよね。お互いの領域にどんなイメージを持っていますか? 山田さん:「ニッチフレグランス」という言葉は正直よくわかっていなかったのですが、「NOSE SHOP」のことは開業当時から存じ上げていました。ちょうど香道以外の香りの世界をもっと幅広く知りたいと思っていたので、今日お話しできてとても嬉しいです。 中森さん:海外に行くと、「日本にも香りの文脈というか、香りの歴史があるよね」と香道について聞かれることがよくありました。ただ、私自身は体験したことがなく、そのたびに「そうなんです」というしかなく…。いつか香道を体験したいと思っていました。タイミングが合わずにいたので、今日はすごく楽しみです。 香りを聞く⸺白檀・沈香・伽羅の三炷 ―さっそく香木を聞く体験をさせてくださるということで、山田さんよろしくお願いします。 山田さん:今日は、白檀・沈香・伽羅の3種を聞香していただきます。実は先日、「NOSE SHOP」に伺いまして、ニッチフレグランスを体験してみました。そこで、香水にも香木由来の香りが結構使われているのだと驚きまして。特に白檀を使った香水は多いですね。 中森さん:フレグランスの世界では白檀を「サンダルウッド」と呼び、非常によく使われています。「クリーミー」と表現されることが多く、ベースノートの定番です。「NOSE SHOP」で扱う1800種類ほどの香りのうち、半数近くに入っているのではないでしょうか。 山田さん:最初はインド産の白檀の香りを聞いてみましょう。約110度の熱で間接的にゆっくりと温めていきます。右手で香炉を持ち、左手に乗せ、右手をかぶせて「洞窟」のように香りを溜め、ゆっくり3回、深呼吸するように聞きます。500年ほど前に今の形になった香道は、香木を人間にとって一番良い香りとして体験する方法だといわれています。 中森さん:……本当に静かな香りですね。サンダルウッド特有のまろやかさが確かにある。香水のサンダルウッドのクリーミーさには、どこか冷たさがあるのですが、香木は温かくて包容力がある印象です。香道では、香りを表現する言葉の決まりはあるんですか? 山田さん:一つは「六国(りっこく)」という概念で、大まかにいえば産地による分類。伽羅、羅国、真那賀、真南蛮、佐曽羅、寸門陀羅の六つです。そしてもう一つが「五味(ごみ)」。⽢(かん)・酸(さん)・⾟(しん)・鹹(かん=塩っぱい)・苦(く)、の五つの味で細かく表現します。 中森さん:料理の五味とは少し違いがあるのですね。この器の温度も一つの情報として伝わってくるのがいいですね。大切なものを手の中に包んでいる感覚があります。香水には時間による変化がありますが、香木の香りも変化するものなのですか? 山田さん:変化しますよ。香木の質と火加減が良ければ40分くらい楽しめます。どの香木もだんだん甘く、強く濁っていきます。ただ、その木の"本気"が感じられるのは最初の1~2分だけです。 2つ目は沈香です。タイ産の真那賀のものです。加熱すると樹脂部分が断面からぷくぷくと滲み出て、キラキラと光るので、そこも注目して聞いてみてください。 中森さん:すごくエレガントな香りですね。白檀とはまた全然違う。 山田さん:エレガントという表現、面白いですね。この香りを五味で表現すると、甘い、酸っぱい、少し塩っぱいとなります。タイで採れる沈香は、少し塩っぱい感じが特徴なのですが、これは甘さと軽やかな酸味がいい感じに出ていますね。 中森さん:パチョリのような美しい香りの雰囲気もあります。あとは土っぽさやアーシーな要素もある気がします。沈香は「ウード」と呼ばれ、香水にも使われますが、その香りとはだいぶ違う印象です。 山田さん:3つ目は香道における絶対的エースである伽羅を聞いていただきましょう。香水には、伽羅は使われないですよね。だからこそ体験していただけたら面白いのではないかと思いましてご用意しました。 中森さん:素人ながらも伽羅は香道のトップオブトップというイメージがあります。 山田さん:沈香と伽羅は木の種類が同じだというのが、学術的な定説になっています。おそらく50年から100年経たないと沈香は伽羅に変化しないだろう、ということが学術的な論説になっていますが、「50年から100年」と幅がありすぎですよね(笑)。そのように謎が多い香木とされています。ぜひ聞いてみてください。 中森さん:すごい。ちょっと目覚めました。ひと聞きめの衝撃がありますね。トップがクリアで、美しい。 山田さん:最初のクリアな酸味は、1人目、2人目にしか感じられない香りです。伽羅の中には緑、紫、黒といったタイプがありまして、これは「伽羅」を象徴する王道の緑タイプの香りです。どの香木も甘・苦・辛を持っていますが、伽羅にしかない苦さと、少しの辛さがあります。 中森さん:残香もすごく美しいですね。あえて表現すると、炷き始めの伽羅にはフレグランスでいうお茶っぽい軽やかさも少しあった。それがもう消えている、その変化も素晴らしい。 山田さん:香道のお稽古では2時間で15回ほど様々な香木を聞くのですが、終わって屋外に出て、風が吹いたとき、ふっと感じられるのは伽羅の香りということが多いです。 中森さん:雅ですね。情報の幅とボリュームが圧倒的でした。ちなみに香道の時間は、どのようにしてクロージングするのですか? 山田さん:組香(くみこう)という香りを聞き分ける遊びをするなら、正解発表と採点、トップ賞への記録紙の授与という明確なクロージングがあります。 でも今日のような会は、会話ができればそれがゴール。お互いの興味が交わるものを通して仲良くなる時間です。もちろんマニアの方が集まれば「緑の伽羅を三種いただいたけどどうだった?」という微差を楽しむ会もあり得ます。どれも正解です。...
日本橋兜町で、漢方の知恵薫る一杯を。クラフトハーブティー&チャイ専門店「TYNK Kabutocho」
金融街として知られる日本橋兜町・茅場町エリア。近年は、歴史ある建築物や街並みのあいだに、新しい店やカルチャーが少しずつ増えている。 そんな街で見つけたのが、「TYNK Kabutocho(ティンク カブトチョウ)」だ。 カフェインレスのクラフトハーブティーとチャイをつくってきた「TYNK」の、初めての実店舗が、この夏、兜町にオープンした。 「TYNK」は、日本古来の漢方文化を受け継ぐ漢方薬剤師・吉田重子氏が監修する、カフェインレスのクラフトハーブティーブランド。 2022年のブランド誕生以来、TRUNK(HOTEL)やおちあいろう、Soil Nihonbashiといった宿泊施設で提供されてきたほか、Barneys New Yorkでの取り扱いや、豊島美術館、The Kahala Hotel & Resort Yokohamaとのオリジナルブレンド開発など、さまざまなパートナーシップを通じて着実にファンを広げてきた。 宮崎県延岡市には自社農園を構え、無農薬でハーブを栽培するなど、原料づくりの段階から丁寧にものづくりに向き合っているのもTYNKの魅力のひとつ。 「ノンカフェインは味気ない」「漢方は飲みにくい」。そんな先入観を覆すような、おいしさを追求している。 厳選された植物由来の素材を用い、漢方の知見と自然の恵みを一杯に凝縮している ロゴやパッケージには、世界的デザイン集団Tomatoの創業者サイモン・テイラー氏が携わっており、視覚的な美しさもTYNKらしさを形づくっている 日本の作家ものや海外から買い付けてきたヴィンテージなど趣味のよい器が並ぶ 創業者の辻田泰典氏は、長くファッション業界でブランド開発に携わった人物。自身がカフェインに敏感な体質だった経験から「TYNK」を立ち上げた。 店内のメニューには、ハーブティーやチャイに加えて、グルテンフリーのオリジナルスイーツやクラフトアイスクリームも並ぶ。ハーブやスパイスの香りを、飲みものだけでなく、甘いものでも楽しめるのがうれしい。 左:1113 リラックスティー 700円、右:ヒュウガトウキ香る米粉のレモンケーキ 780円 左:いちじくとチャイのオーツキャロットケーキ 830円、クラフトハーブティー 700円中:和漢チャイオーツミルクラテ 800円右:和漢チャイトニック 800円 TYNKが掲げるのは「Pause(余白)」という考え方。茶葉を蒸らす数分間や、一杯のお茶をゆっくり味わう時間を、日常のなかにつくるというものだ。 金融街としての歴史を残しながら、新しい文化や店が少しずつ根づきはじめている日本橋兜町。その街に、漢方の知恵をベースにしたハーブティーとチャイという、新しい時間の過ごし方が加わった。 兜町で、漢方とチャイ。歴史ある建築や景観を継承しながら進化するこの街を訪れる理由が、またひとつ増えた。...
Columns
「そのままでいいと思えた時」
これまでのコラムで、 植物のことや、整えるという感覚について書いてきました。 急がせないこと。 足しすぎないこと。 無理をさせないこと。 そんな考え方は、 日々のサロンワークの中で 少しずつ形になってきたものです。 今も毎日、 たくさんのお客様と向き合っています。 以前よりも、 むしろ働いている時間は長いかもしれません。 ただ、 仕事の密度は変わりました。 日々たくさんの方と向き合いながらも、 一人ひとりの髪との関係は、 以前よりも深くなっているように感じます。 その違いは、 自分の中ではとても大きなものです。 バッキンガム宮殿の近くの公園 美容師になると決めたとき、 私は日本のサロンには就職せず、 ロンドンに渡りました。 ヴィダルサスーンで学びながら、...
「人生に凛として息づく“経験”というレガーロ」
2月も気づけばもう中旬。 そして今年は、ミラノとコルティナという2つの都市が舞台となる、特別なオリンピックの2月でもあります。 イタリアでの開催というだけで、競技そのものはもちろん、街並みや観客席に映るイタリアの人々の姿に、どこか懐かしさが重なり、いつもより心の距離が近く感じられるのは不思議です。 そんな中で迎えた開会式。 あまりの美しさに息をのむほどで、胸の奥がじんわりと熱くなるような時間でした。今日は、そのエモーショナルな余韻を少し綴らせてください。 歴史、芸術、モード、そしてイタリアのパッション。 イタリアという国が持つ独自の魅力――いわゆる Italianity(イタリアニティ)――が、細部にまで散りばめられた開会式。どの瞬間を切り取っても絵画のように美しく、これほどまでに心を奪われた開会式は、私にとって初めての体験でした。 テーマは「Armonia(ハーモニー)―調和」。 今の世界情勢にそっと問いかけるような言葉であり、演出そのものがそのテーマを静かに、しかし力強く語っているように感じられました。 イタリアでのオリンピックだからこそ、心に響くものがあったのかもしれません。 美しさと情熱が溶け合うあの光景は、きっと長く記憶に残り続ける気がします。 via: Armani "Omaggio al Sig. Armani alla Cerimonia di Apertura dei Giochi Olimpici Invernali Milano Cortina 2026" 開会式の中でも、ひときわ心を奪われたシーンがありました。 イタリア国旗の“緑・白・赤”を基調にした「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のパンツスーツを纏った60人のモデルたちが、色ごとに整然と並び、国旗を届けるモデルのヴィットリア・チェレッティを先導して歩く姿。...
『お久しぶりです』
こんにちは。 前回の投稿から1年以上、長いことご無沙汰してしまいました。 そして、あっという間に2月も中旬。大変遅ればせながら、 「2026年が皆様にとって健康で充実した1年になりますように。」 もうかなり前のような… クリスマスから年末年始、いつもの散歩道の様子を。 まずはクリスマス時期から。 サクレ•クール寺院界隈、メトロ アベス駅の広場には毎年小さいクリスマスマーケットが。 午前中に通ったのでまだ人もまばら。 クリスマス期間中、パリのあちこちに(多分)市が設置しているシンプルすぎるクリスマス ツリー。左奥には現在建物の外壁工事中"ジュテームの壁"。暫く金網越しでの写真撮影しかできず。 この界隈にある布屋街もクリスマスデコレーションされ 広場に面して建っている(パリで初めての鉄筋コンクリート建築の)サン•ジャン•ドゥ•モンマルトル教会。レンガとモザイクアートの外観が目を引きます。中を見てまわるのにサイズ感がちょうど良く、また天井から下がる照明が素敵で。 この教会は娘と散歩中によく立ち寄り、2人で椅子に腰かけてしばしぼーっと過ごしたり。 静寂が気持ちを落ち着かせてくれます。 ちなみに普段の広場まわりからサクレ•クール寺院前にかけてはこちら。 最近は雨も多くどんよりした天気が続いていて、空が暗すぎる。 写真も暗い。これがパリの色って感じもしますが…お日様が恋しい。 続いて1月の風物詩。各家庭で飾られていた"もみの木"が無惨な形で道端に捨てられます。 もみの木廃棄用ごみ袋にいれてあるのはまだましな方。 2007年から始まったもみの木回収、だんだん回収場所が増えて、ここ数年近所の公園にも。道端に捨てられることは減ってきてはいるものの、まだまだ目にします。 公園内にできた回収場所。 ...
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Satayam - Khadi Cotton Beach & Bath Towel
The Connoisseurs
Contributors

LIfT オーナーヘアスタイリスト
BAMBI.
日本で美容師免許を取得後、ピーターグレイ氏に師事し、アシスタントとしてロンドンで経験を積んだ後、帰国。都内の某有名大型サロンで11年間働いた後、表参道に2席のみの美容室をオープンする。
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イラストレーター / テキスタイルデザイナー
AOKI CHIE
(aotché design)
95年に渡仏。パリ服飾学校スタジオベルソー卒業後、マルティーヌ・シットボン、ランバン等のメゾンでレザーグッズデザイナーとして勤務。
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JAZZY DOG / JAZZY DOG LIFE 代表
tomoki kobayashi
猟犬の保護犬リンリンを家族に迎えたことをきっかけに犬について学び始め、「スタディ・ドッグ・スクール認定ドッグトレーナー」、「米国CCPDT認定ドッグトレーナー(CPDT-KA)」を取得。2018年から放棄された犬たちの保護・譲渡活動をスタート。
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TRUNK by KITAZAWA レイティエ(トランク職人)
Yu Kitazawa
物作りの一家に生まれ、欲しいものは自分で作っちゃえ、という環境で幼少期を過ごす。10代の頃より革製品を作りはじめ、学生時代よりイタリア、フィレンツェの工房で革の技術を磨く。
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modus vivendi 代表
橋口 麻紀
イタリアのアイウエアカンパニーのラグジュアリーブランドのコミュニケーション、マーケティングを経て、ブランディングを主としたmodus vivendi(モードゥス ヴィベンディ)株式会社を2006年に設立。
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ブランドビジネスコンサルタント / 株式会社モアサマー 代表取締役
稲田 元彦
1966年生まれ東京都出身ファッションビジネスを営む家に生まれ、美術を学び、ブランドを産んで育てる仕事をしてきました。音楽や映画、サブカルチャー好きの自称オタクです。
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