いいものには物語がある。
贈ることも、受け取ることも、
その背景を知ればもっと面白い。
“Thoughtful Giving”。
それは、物語ごと贈るという新しい選び方。
Feature article
Magazine
Stories
たった数ページなのに、読み終わったあと、世界がちょっと違って見える。星新一のショートショートには、そんな不思議なところがある。
『ボッコちゃん』『おーい でてこーい』『きまぐれロボット』。タイトルを見て「あ、学校で読んだ」と思った人もいるかもしれない。そんな人にこそ、大人になった今、もう一度読んでみてほしい。
2026年は、星新一の生誕100年。それを記念して、新潮文庫から『きまぐれカプセル』が刊行された。新聞や雑誌、企業のPR誌や会報などに書いた文章から、これまで書籍や文庫に収録されていなかったエッセイ91編をセレクト。さらにショートショート3編を加えた一冊だ。
ところで、星新一ってどんな人?
1926年、東京生まれ。本名は星親一。
東京大学農学部農芸化学科を卒業し、父が創業した製薬会社で一時社長を務めた。つまり最初から文学青年として作家を目指していた人、というわけではない。
そして1950年代、空飛ぶ円盤研究会に入会する。なんとも星新一らしい入口だ。そこからSFの世界と出会い、1957年には日本初期のSF同人誌「宇宙塵」の創刊に参加。作品が江戸川乱歩の目に留まり、作家への道が開けていく。
後に星新一の代名詞となったのが、「ショートショート」だった。短い。文章もシンプル。登場人物の細かなプロフィールや、情緒的な風景描写もほとんどない。その代わりに出てくるのは、ロボット、宇宙人、薬、会社、広告、便利な機械。
未来の道具を次々と登場させながら、星新一が観察していたのは、どうやら未来そのものではなく、それを手にした人間のほうだった。欲張ったり、怠けたり、騙したり、便利さを追い求めすぎたり。未来になっても、人間は案外変わらない。そこが面白い。
1983年には、自ら目標に掲げていたショートショート1001編を達成。『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『悪魔のいる天国』『妄想銀行』など、今も読み継がれる作品を残した。
未来を書いたのに、古くならない。
星新一を今読むと、ときどきドキッとする。
便利になりすぎた社会。人間の代わりに働く機械。情報に振り回される人々。効率を追いかけた結果、妙なところへ辿り着いてしまう世界。もちろん、スマートフォンも生成AIもない時代に書かれた物語だ。なのに、「これ、今の話じゃない?」と思ってしまう。
未来を正確に予言したから、というだけではない。テクノロジーが変わっても、その前で右往左往する人間の欲望や滑稽さは、それほど変わらない。星新一はそこだけを、まるで実験室で不純物を取り除くように抽出して物語にした。農芸化学を学んだ人だから、と言ったら少し出来すぎだろうか。
余計なものがない。だから古びない。ショートショートという小さな器の中に、人間という生き物の妙な性質が、標本みたいにきれいに収まっている。
100年目に見つかった、知らない星新一。
そんな星新一の生誕100年に刊行されたのが、『きまぐれカプセル』。面白いのは、単なるベスト作品集ではないところだ。
空飛ぶ円盤に熱中した理由。5000年後へ送るタイムカプセルに何を入れるか。江戸川乱歩や小松左京、和田誠との交流。幼少期から晩年まで、本人が自分について書いた文章を時系列で読むことができる。つまりこれは、ちょっと変わった「星新一の自伝」でもある。
さらに気になるのが、今回収録された3編のショートショート。なかでも「聖地」は、生誕100年となる2026年、遺品のなかから下書きの状態で発見された未発表作だ。次女の星マリナさんによれば、比較的大きな字で書かれていることから、かなり初期の作品と考えられるという。
そして、そこに登場するのが、「なんでもできるけれど、電気代がかかる」存在。AIの消費電力が話題になる2026年にこれが出てくる。出来すぎた話みたいだけれど、本当の話だ。
表紙を飾るのは、盟友・真鍋博
装画は、星作品のイラストを初期から数多く手がけた真鍋博(1932〜2000)が担当した。『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』など、初期から数多くの星作品の装画を手がけた盟友だ。
シャープな線、機械、都市、未来。少しユーモラスで、少し不穏。星新一の乾いた文章と真鍋博のグラフィックは、いま見ても驚くほど相性がいい。新刊なのに、どこか古いSF文庫を古本屋で見つけたような感じがするのは、そのせいかもしれない。本というのは文章だけでできているわけじゃない。装丁も含めて記憶に残る。そんなことまで思わせてくれる一冊だ。
100年前に生まれた人が、半世紀以上前に考えた未来。そこに、AIと暮らす2026年の僕たちがいる。
数ページ読んだあと、スマートフォンやAIや、便利すぎる毎日の景色が、ほんの少し違って見えるかもしれない。
_______________
INFORMATION
『きまぐれカプセル』星新一 著新潮文庫2026年8月28日発売エッセイ91編+ショートショート3編収録URL: https://www.shinchosha.co.jp/book/109855/
『いつでもいま – ガラスに映す光』柿本ケンサク写真展、代官山ヒルサイドで開催
写真家・映像作家の柿本ケンサクが、ガラス作家・三嶋りつ惠の作品を「光を描くためのレンズ」として撮影した新作「Hikari」シリーズを発表する。 『いつでもいま – ガラスに映す光』柿本ケンサク写真展は、9月23日から10月4日まで、代官山ヒルサイドテラス・ヒルサイドフォーラムで開催。柿本氏にとって代官山は、写真家としての活動をスタートさせた場所でもある。2016年の『TRANSLATOR』、2021年の『TRANSFORMATION』に続き、今回で3度目の展示となる。 今回、柿本氏が対峙するのは「ガラス」だ。ヴェネツィアと京都を往復しながら制作を続けるガラス作家・三嶋りつ惠。ムラーノ島の職人技を受け継ぎながら、無色透明の中に光の輪郭だけを描き出す、あの独特の存在感を持つ作品群である。 柿本氏は三嶋氏のガラス10点を、レンズのように用いた。数ミリ単位でガラスの位置をずらし、角度を変え、通過する光を捕まえる。目の前の風景を「写す」のではなく、光そのもの、そして偶然と対話しながらシャッターを切る。だから写真には、その日の空気、季節の匂い、撮影者の身体の揺れまでもが、痕跡として刻み込まれることになる。 写真は光を固定する。ガラスは光を揺らす。 新作『Hikari』シリーズ ©Kensaku Kakimoto ©Kensaku Kakimoto ©Kensaku Kakimoto ガラスによって屈折し、揺らぎ、輪郭を変える光。そこには、風景そのものだけでなく、その場に流れる時間や季節の空気、身体の揺れ、ガラスの個体差までが痕跡として残る。 「固定」と「流動」、「定着」と「融解」。 異なる性質を持つ写真とガラスを重ねることで、柿本氏がこれまで向き合ってきた「時間」と「記憶」が、より感覚的な像として立ち上がる。 透明なガラスは、何もないように見えて、光を受け止めることで初めてその存在をあらわにする。そのガラスを通過した光を、今度は写真が固定する。揺らぐ光が一瞬だけ像になり、その像がまた見る人の記憶のなかで揺らぎ始める。タイトルの『いつでもいま』が示すのは、そんな一瞬と永続のあいだなのかもしれない。 三嶋りつ惠氏によるガラスレンズ作品「キンギョレンズ」 会場では「Hikari」シリーズの写真作品に加え、三嶋氏による「タマレンズ」「キンギョレンズ」などのガラスレンズ作品も展示。 会期中の10月3日には、柿本氏と三嶋氏によるトークイベントも予定されている。写真を通して光の一瞬を捉える柿本氏と、透明なガラスを通して光をかたちにしてきた三嶋氏。二人が語る「光」と「時間」は、聞き逃せない。 さらに南青山のLUMIX BASE TOKYOでは、同時期に連動展『いつでもいま』を開催。LUMIX L10で撮影された、ヒルサイドフォーラムとはまた異なる柿本氏の眼差しに出会える。ハシゴして訪れる価値は、十分にある。 _______________ INFORMATION 『いつでもいま – ガラスに映す光』柿本ケンサク写真展 会期:2026年9月23日(水・祝)- 10月4日(日)12:00 - 19:00 ※最終日11:00...
名画は、見るほどに面白くなる。500点の傑作を読み解く『完全解読 世界の美術』
美術館で名画を前にして、さて、どこを見ればいいのだろう。 色なのか、構図なのか。描かれた人物の表情なのか。もちろん、ただ眺めるだけでも絵は楽しいのだが、その一枚に隠された意味や時代背景を少し知るだけで、それまで見えていなかったものが、ふっと浮かび上がってくることがある。 そんな「見るための目」を育ててくれる一冊が登場した。 英国の出版社DK社による『完全解読 世界の美術』。洞窟壁画からルネサンス、印象派、北斎、そして現代のグラフィティ・アートまで。古今東西500点以上の作品を、512ページの大ボリュームで紹介する美術書だ。 名作を、細部から読み解く。 この本の面白さは、単なる美術史の図鑑ではないところにある。 作品を大きな図版で見せながら、ある部分へぐっとフォーカスする。なぜこの色が使われているのか。この人物は誰なのか。画面に描き込まれた小さなモチーフは何を意味するのか。構図にはどんな仕掛けがあるのか。 一枚の作品を部分から読み解いていくことで、知っているつもりだった名画が、まったく違う顔を見せはじめる。 フェルメールも、ダ・ヴィンチも、ゴッホも、北斎も。作品についての知識を増やすというより、自分の目で発見するためのヒントをもらう。そんな感覚に近い。 本書P132~P133より 本書P467より 西洋美術だけではない、世界の美術史。 本書P275より もうひとつ、この本で注目したいのが、その視野の広さだ。 いわゆる西洋美術の名作だけでなく、日本を含むアジア、アフリカ、中南米の作品や、これまで美術史の中心では十分に語られてこなかった女性芸術家たちも数多く登場する。 先史時代から現代までを辿る章立ても、地域をひとつの中心から眺めるのではなく、同じ時代に世界のあちこちで生まれていた表現を並べて見せてくれる。 たとえば、ルネサンスの隣にはアステカ文明やベニン王国、明代の絵画や雪舟・狩野派がある。 美術史を一本の線として覚えるのではなく、世界各地で同時進行していた文化の地図として眺めてみる。そんな読み方ができるのもいい。 例えば、風景画だけを時代を超えて見てみる。 本書P322~P323より さらに面白いのが、時代や地域とは別に設けられたテーマ展示。 自画像、風景画、静物画、神話画、動物画、戦争画など、共通するテーマを持つ作品を時代横断で並べている。 年代順に美術史を追うのとは違い、同じモチーフが場所や時代によってどう変化したのかを比較できる。自宅で小さなキュレーション展を開くような楽しさだ。 「名作が名作である理由」 本書P492~P493より 巻末には300人以上の芸術家プロフィールも収録。 気になる作家を調べたり、展覧会へ出かける前に予習したり、見てきた作品について帰宅後にもう一度ページを開いたり。辞書のように使うこともできれば、休日にコーヒーを飲みながら、気の向くままページをめくる画集にもなる。 先日逝去された評論家の山田五郎さんは本書について、美術史だけでなく、なぜ名作が「名作」とされるのかを学べる一冊として推薦コメントを寄せている。 美術に詳しくなるため、というよりも、美術を自分の目でもう少し面白く見るために。 一生ものの鑑識眼は一日では手に入らないが、その入口はこの一冊で開く。...
アフリカ黒檀に刻まれた、名もなき人々の物語。マコンデ美術館「ビナダム展」
三重・伊勢の小さな美術館で、この秋、静かに熱を帯びた企画展が幕を開ける。テーマは「人間」。それも、英雄でも神でもない、ごくふつうの人々の暮らしだ。
タンザニアのマコンデ族が手がける木彫芸術といえば、精霊「シェタニ」に代表される抽象的でうねるようなフォルムを思い浮かべる人が多いかもしれない。だが今回、マコンデ美術館が光を当てるのは、その対極にあるもうひとつの系譜「ビナダム」だ。
スワヒリ語で「人間」を意味するこの言葉が指し示すのは、畑を耕す人、重い荷を背負って歩く人、顔を寄せ合って言葉を交わす人々。神話的な物語ではなく、東アフリカの大地に根ざした、ごく日常的な営みのひとこまである。
重厚なアフリカ黒檀という素材から力強く、そして大胆に彫り出されたそれらの人物像には、無骨さの奥に確かな体温が宿る。彫刻家たちが人間の暮らしそのものへ向けた、どこか慈しみを帯びたまなざしが、木肌の陰影の中に静かに息づいている。
シェタニの作品群がマコンデ彫刻の「幻想」の側面だとすれば、ビナダムは「現実」の側面。同じ木から生まれた、まったく異なる二つの世界観を知ることで、マコンデ彫刻という表現の奥行きがより立体的に見えてくるはずだ。
遠く離れたアフリカの大地に生きた人々の逞しさは、時代や国境を越えて、見る者の胸をふと打つ。技術と想像力によって命を吹き込まれた木の彫像たちに、会いに行きたい。
_______________
INFORMATION
マコンデ彫刻 ビナダム展 ―アフリカに生きる人々の姿―
日程:2026年11月21日(土)〜2027年2月14日(日)休館日:火曜日、12月31日(木)〜1月2日(土)会場:マコンデ美術館住所:三重県伊勢市二見町松下1799-4公式サイト:https://museum.makonde.jp/exhibition/
About the Museum
マコンデ美術館 —見て、触れて、感じる彫刻の美術館。
前館長・水野恒男氏が長年にわたり蒐集した2,000点を超えるマコンデ彫刻コレクションのうち、約400点を常設展示。ティンガティンガ絵画やアフリカの民族資料も合わせて紹介しており、アフリカの大地が育んだ生命力あふれる造形と出会える場所だ。
_______________
この秋、恋はナポリの港からやってくる。ロッシーニの洒脱な喜劇『イタリアのトルコ人』
新国立劇場の新シーズンは、ロラン・ペリー演出『イタリアのトルコ人』から。 恋をしたい妻と、異国からやってきたプレイボーイ。振り回される夫に、忘れられない元恋人。まるで少し昔の恋愛映画のような人間模様を、ロッシーニは軽やかな音楽とユーモアで描いた。 新国立劇場の2026/2027シーズンを開くのは、ロッシーニのオペラ・ブッファ『イタリアのトルコ人』。『セビリアの理髪師』ほど広く知られてはいないけれど、恋の駆け引きと洒脱なアンサンブルに満ちた、知る人ぞ知る喜劇だ。 今回、とりわけ注目したいのがロラン・ペリーの演出。 19世紀のオペラが、20世紀のポップカルチャーへ ©Javier del Real | Teatro Real 遊び心とスパイスの効いたセンスで、上演のたびに話題をさらってきた彼が今回選んだモチーフは、イタリア発祥の"フォトノベル"。1950年〜1970年にかけて人気を博した、写真と吹き出しで綴られるメロドラマ風の恋愛小説だ。 舞台では、結婚生活に退屈しロマンス小説に夢中になるヒロイン、フィオリッラの空想と現実が入り混じる。登場人物たちは二次元の物語へ入り込み、また現実へと戻ってくる。 19世紀に書かれたオペラが、20世紀のポップカルチャーを経由して、現代の舞台へ。そんな少し奇妙な時間旅行こそ、このプロダクションのおもしろさかもしれない。 演出・衣裳を手がけるロラン・ペリー、美術のシャンタル・トマによって、作品世界がどのような色彩とフォルムで立ち上がるのかにも注目したい。 恋のゲームは、ナポリから。 ©Javier del Real | Teatro Real 物語の舞台はナポリ。 物語の主人公フィオリッラは、夫ジェローニオとの単調な毎日にうんざりしている女性。そこへナポリの港に降り立つのが、プレイボーイのトルコ王子セリム。二人の視線が絡んだ瞬間から、堅物の夫ジェローニオ、セリムに未練を残す元恋人ザイダ、さらに彼女を慕うナルチーゾまで加わり、恋模様は見事なほどにもつれていく。 そして、その騒動を少し離れたところから眺めているのが、詩人プロスドーチモ。彼はこの騒動を「上出来な喜劇のネタ」とほくそ笑みながら、陰でそっと糸を引いていく。 恋愛喜劇でありながら、物語をつくることそのものを遊んでしまう。そんな知的ないたずらも、ロッシーニならではの魅力だ。 旬の歌い手たちが揃う、この上ない顔合わせ ヒロイン、フィオリッラを歌うのは、24/25シーズン《夢遊病の女》に彗星のごとく登場し、一夜にして評判をさらったソプラノ、クラウディア・ムスキオ。相手役のセリムには、パリ・オペラ座やロッシーニの聖地ペーザロで活躍する若手、アレハンドロ・バリニャス・ビエイテス。そして夫ジェローニオ役には、ブッフォ(喜劇的な役どころ)の世界的名手パオロ・ボルドーニャが名を連ねる。 指揮台に立つのは、イタリアの俊英アレッサンドロ・ボナート。「Forbes Italia」誌が選ぶ2025年「世界を変える30歳未満」にも名を連ね、今夏のロッシーニ・オペラ・フェスティバルでもみずみずしい音楽性で喝采を浴びたばかりの逸材だ。 軽快なリズム、華やかなアンサンブル、登場人物たちのすれ違いを彩るロッシーニの音楽を、どのように舞台上で躍動させるのかにも期待が高まる。 ©Javier del Real |...
「ディーヴァ」、世界を巡り、東京へ。歌声が紡いだ200年の物語
ひとつの歌声が、人々の心を動かし、社会の風景を変えることがある。 19世紀のオペラ歌手から、ハリウッド黄金期のスター、現代のポップアイコンまで。「ディーヴァ」と呼ばれてきた表現者たちは、類まれな才能と存在感によって観客を魅了すると同時に、時代が定めた女性像や、性、人種をめぐる境界にも挑み続けてきた。 そんなディーヴァの歴史を、19世紀から現代まで約200年にわたってたどる展覧会「DIVA」が、東京にやってくる。英国が誇るヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)が手がけた本展は、アジアで唯一、そして世界巡回の掉尾を飾る舞台に東京を選んだ。会場は、国立新美術館。会期は2027年3月24日から7月19日まで。 マリア・カラスの気高い佇まい、マリリン・モンローの儚さ、レディー・ガガの反逆、ビョークの静謐なる詩情。時代も国境も超え、その声と存在そのもので世界を魅了してきた約100名のディーヴァたちの軌跡を、約280点の貴重な衣装と資料でたどる、かつてない規模の回顧展だ。 本展の大きな見どころは、約280点におよぶ衣装や資料。 なかでも注目したいのが、マリア・カラス、マリリン・モンロー、アデル、レディー・ガガ、エルトン・ジョン、リアーナ、ビョークらが身につけた伝説のステージ衣装、約60点。スターが舞台で一度だけまとったドレス。その人のイメージを決定づけた、あまりにも有名なスタイル。V&Aの至宝に、個人が秘蔵してきた逸品を加え、写真、映像、ポスター、LPと共に、彼女たちの神話を紡ぎ直す。日本展限定の展示も見逃せない。 華やかな衣装や音楽の背後にあるのは、社会の大きな変化だ。男性中心の価値観が支配していた時代に、女性やクィアの表現者たちは、どのようにして自らの声を獲得していったのか。本展では、時代ごとに姿を変えてきたディーヴァという存在を、フェミニズムやジェンダーの視点から捉え直す。ディーヴァとは、単なる歌姫を意味する言葉ではない。それは、自分自身の存在と表現を武器に、社会の常識を書き換えてきた人々の物語でもある。 サラ・ベルナール、「ジャンヌ・ダルク」のポスター | © Victoria and Albert Museum, London 展示は大きく2つの章で構成される。 第1幕|ディーヴァの誕生 アデリーナ・パッティ、サラ・ベルナール、イサドラ・ダンカン、マレーネ・ディートリッヒ、ジュディ・ガーランド、マリア・カラス、マリリン・モンロー、エリザベス・テイラー...。 オペラの黄金時代からハリウッドの黄金期、そしてその黄昏へ。圧倒的な歌声や美貌、個性、そしてスター性を武器に、女性たちが「ディーヴァ」という神話を築いていった時代をたどる。 第2幕|ディーヴァの再生・復活 ニーナ・シモン、アレサ・フランクリン、ドリー・パートン、グレイス・ジョーンズ、マドンナ、ホイットニー・ヒューストン、ビョーク、ビヨンセ、レディー・ガガ、リアーナ、アデル、ビリー・アイリッシュ...。 第2波フェミニズム以降、ディーヴァの意味は大きく変わっていく。社会から与えられた役割を演じるのではなく、自らの声と身体、ファッション、音楽を通して「自分は何者なのか」を表現する。自由を求め、既成概念を打ち破り、ときに社会そのものに問いを投げかけてきた表現者たち。 その系譜は、現代のポップ・カルチャーへと確かにつながっている。 『椿姫』でヴィオレッタ役を演じるマリア・カラス(1958 年) Houston Rogers © Victoria and Albert Museum, London...
Columns
「そのままでいいと思えた時」
これまでのコラムで、 植物のことや、整えるという感覚について書いてきました。 急がせないこと。 足しすぎないこと。 無理をさせないこと。 そんな考え方は、 日々のサロンワークの中で 少しずつ形になってきたものです。 今も毎日、 たくさんのお客様と向き合っています。 以前よりも、 むしろ働いている時間は長いかもしれません。 ただ、 仕事の密度は変わりました。 日々たくさんの方と向き合いながらも、 一人ひとりの髪との関係は、 以前よりも深くなっているように感じます。 その違いは、 自分の中ではとても大きなものです。 バッキンガム宮殿の近くの公園 美容師になると決めたとき、 私は日本のサロンには就職せず、 ロンドンに渡りました。 ヴィダルサスーンで学びながら、...
「人生に凛として息づく“経験”というレガーロ」
2月も気づけばもう中旬。 そして今年は、ミラノとコルティナという2つの都市が舞台となる、特別なオリンピックの2月でもあります。 イタリアでの開催というだけで、競技そのものはもちろん、街並みや観客席に映るイタリアの人々の姿に、どこか懐かしさが重なり、いつもより心の距離が近く感じられるのは不思議です。 そんな中で迎えた開会式。 あまりの美しさに息をのむほどで、胸の奥がじんわりと熱くなるような時間でした。今日は、そのエモーショナルな余韻を少し綴らせてください。 歴史、芸術、モード、そしてイタリアのパッション。 イタリアという国が持つ独自の魅力――いわゆる Italianity(イタリアニティ)――が、細部にまで散りばめられた開会式。どの瞬間を切り取っても絵画のように美しく、これほどまでに心を奪われた開会式は、私にとって初めての体験でした。 テーマは「Armonia(ハーモニー)―調和」。 今の世界情勢にそっと問いかけるような言葉であり、演出そのものがそのテーマを静かに、しかし力強く語っているように感じられました。 イタリアでのオリンピックだからこそ、心に響くものがあったのかもしれません。 美しさと情熱が溶け合うあの光景は、きっと長く記憶に残り続ける気がします。 via: Armani "Omaggio al Sig. Armani alla Cerimonia di Apertura dei Giochi Olimpici Invernali Milano Cortina 2026" 開会式の中でも、ひときわ心を奪われたシーンがありました。 イタリア国旗の“緑・白・赤”を基調にした「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のパンツスーツを纏った60人のモデルたちが、色ごとに整然と並び、国旗を届けるモデルのヴィットリア・チェレッティを先導して歩く姿。...
『お久しぶりです』
こんにちは。 前回の投稿から1年以上、長いことご無沙汰してしまいました。 そして、あっという間に2月も中旬。大変遅ればせながら、 「2026年が皆様にとって健康で充実した1年になりますように。」 もうかなり前のような… クリスマスから年末年始、いつもの散歩道の様子を。 まずはクリスマス時期から。 サクレ•クール寺院界隈、メトロ アベス駅の広場には毎年小さいクリスマスマーケットが。 午前中に通ったのでまだ人もまばら。 クリスマス期間中、パリのあちこちに(多分)市が設置しているシンプルすぎるクリスマス ツリー。左奥には現在建物の外壁工事中"ジュテームの壁"。暫く金網越しでの写真撮影しかできず。 この界隈にある布屋街もクリスマスデコレーションされ 広場に面して建っている(パリで初めての鉄筋コンクリート建築の)サン•ジャン•ドゥ•モンマルトル教会。レンガとモザイクアートの外観が目を引きます。中を見てまわるのにサイズ感がちょうど良く、また天井から下がる照明が素敵で。 この教会は娘と散歩中によく立ち寄り、2人で椅子に腰かけてしばしぼーっと過ごしたり。 静寂が気持ちを落ち着かせてくれます。 ちなみに普段の広場まわりからサクレ•クール寺院前にかけてはこちら。 最近は雨も多くどんよりした天気が続いていて、空が暗すぎる。 写真も暗い。これがパリの色って感じもしますが…お日様が恋しい。 続いて1月の風物詩。各家庭で飾られていた"もみの木"が無惨な形で道端に捨てられます。 もみの木廃棄用ごみ袋にいれてあるのはまだましな方。 2007年から始まったもみの木回収、だんだん回収場所が増えて、ここ数年近所の公園にも。道端に捨てられることは減ってきてはいるものの、まだまだ目にします。 公園内にできた回収場所。 ...
What we love now
Store
My Pleasure’s
New & Notable
Satayam - Khadi Cotton Beach & Bath Towel
The Connoisseurs
Contributors

LIfT オーナーヘアスタイリスト
BAMBI.
日本で美容師免許を取得後、ピーターグレイ氏に師事し、アシスタントとしてロンドンで経験を積んだ後、帰国。都内の某有名大型サロンで11年間働いた後、表参道に2席のみの美容室をオープンする。
Read more
イラストレーター / テキスタイルデザイナー
AOKI CHIE
(aotché design)
95年に渡仏。パリ服飾学校スタジオベルソー卒業後、マルティーヌ・シットボン、ランバン等のメゾンでレザーグッズデザイナーとして勤務。
Read more
JAZZY DOG / JAZZY DOG LIFE 代表
tomoki kobayashi
猟犬の保護犬リンリンを家族に迎えたことをきっかけに犬について学び始め、「スタディ・ドッグ・スクール認定ドッグトレーナー」、「米国CCPDT認定ドッグトレーナー(CPDT-KA)」を取得。2018年から放棄された犬たちの保護・譲渡活動をスタート。
Read more
TRUNK by KITAZAWA レイティエ(トランク職人)
Yu Kitazawa
物作りの一家に生まれ、欲しいものは自分で作っちゃえ、という環境で幼少期を過ごす。10代の頃より革製品を作りはじめ、学生時代よりイタリア、フィレンツェの工房で革の技術を磨く。
Read more
modus vivendi 代表
橋口 麻紀
イタリアのアイウエアカンパニーのラグジュアリーブランドのコミュニケーション、マーケティングを経て、ブランディングを主としたmodus vivendi(モードゥス ヴィベンディ)株式会社を2006年に設立。
Read more
ブランドビジネスコンサルタント / 株式会社モアサマー 代表取締役
稲田 元彦
1966年生まれ東京都出身ファッションビジネスを営む家に生まれ、美術を学び、ブランドを産んで育てる仕事をしてきました。音楽や映画、サブカルチャー好きの自称オタクです。
Read more







