香りを飲む。フレグランス思考で構築されたバー「はな」とは?
横丁に潜む、1.5坪の隠れ家
再開発の足音が止まらない街、渋谷。その喧騒からほんの数歩奥へ入ると、細い路地と赤提灯の時間がいまも息づく場所がある。渋谷のんべい横丁。
その一角に、カルチャー好きほど反応してしまう一軒がある。名前は「はな」。
手がけたのは、ニッチフレグランスの世界を日本に紹介してきたNOSE SHOP。ここは、“あなたの鼻が主役”のバーだ。
グラフィックデザインを手がけたのは、長嶋りかこ氏。目に見えない香りを、視覚へと美しく翻訳している。
香水的思考で構築された一杯
この店の面白さは、香水の世界で用いられる「ノート(香調)」の概念を、そのままグラスの中に落とし込んでいるところにある。
トップノートの軽やかな立ち上がり。
ボディノートの丸み。
ラストノートの静かな余韻。
香りと味わいが時間差でほどけていく。花や柑橘、ハーブ、スパイス──素材のニュアンスが繊細に重なり、ひと口ごとに表情を変えていく。
メニュー監修は、mitosaya薬草園蒸留所代表の江口宏志氏。
南ドイツで蒸留を学び、千葉県大多喜町で果樹や薬草を原料に蒸留酒やリキュールを手がけてきた彼の哲学が、グラスの中に息づく。自然の個性を尊重した味わいは、どこか詩的で、身体の奥へとゆっくり広がっていく。

『マッチャ・トロピカル』バナナやマンゴー、ドラゴンフルーツを使ったトロピカルな味わいが特徴のオリジナルのリキュール「TROPICAL NOTE」に抹茶を合わせた深みある一杯。
ワインのセレクトは、The Liquid代表取締役の阿部 祥大氏。たとえば《Rose 2017 / BETWEEN FIVE BELLS 2015(オーストラリア)》のように、香りと余韻にフォーカスした一本が並ぶ。※画像はイメージです。
ネパールの伝統的な家庭菓子『マサララドゥ』などをベースにした、ペアリングのお菓子も魅力的。「ツルミ製菓」主宰の 鶴見 昂氏(@hepopec)がコーディネートするペアリング菓子が、香りのレイヤーをさらに立体的にする。※画像はイメージです。
小さな空間、広がる感覚
世界のオルファクティブ・カルチャーを背景に持ちながら、舞台は渋谷の横丁。
わずか1.5坪。それでも不思議と圧迫感はない。
店舗デザインを手がけたのは、元木大輔氏(DDAA / DDAA LABO代表)。
横丁の歴史に最大限の敬意を払いながら、かつてこの場所にあった名店の素材を活かし、新旧の記憶が混ざり合う空間へと再構築。香りと会話に自然と集中できる、研ぎ澄まされた設計だ。
ドリンクには、ペアリングのフレグランスが添えられる。ムエット(試香紙)に吹き付けた香りを嗅ぎながら、グラスに口をつける。香水の構造と液体の変化が静かに呼応する 。

新作オリジナルカクテル『ローゼル・アップル・ハイボール』。アップルブランデーベースの瑞々しい一杯には、フランスのフレグランスブランド「Les Bains Guerbois(レ バン ゲルボワ)」の『1986 エクレティック』
をペアリング。
嗅覚に意識を向けた瞬間、さっきまでの渋谷のノイズがふっと遠のく。
東京にいながら、どこか別の都市と接続するような感覚。
友人と訪れてもいい。
ひとりでグラスを傾けてもいい。
喧騒の街で、感覚を静かにチューニングするひととき。
「はな」は、香りを飲む大人のための一軒だ。
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はな
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷1-25-9
渋谷のんべい横丁内 中通り
営業時間:18:00 - 23:00
定休日:日曜日
@hana_nosehop
料金:〈コース〉5,500円〜 、〈単品〉1,000円~、〈ペアリング菓子〉770円〜
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