アフリカ黒檀に刻まれた、名もなき人々の物語。マコンデ美術館「ビナダム展」

アフリカ黒檀に刻まれた、名もなき人々の物語。マコンデ美術館「ビナダム展」

三重・伊勢の小さな美術館で、この秋、静かに熱を帯びた企画展が幕を開ける。テーマは「人間」。それも、英雄でも神でもない、ごくふつうの人々の暮らしだ。

タンザニアのマコンデ族が手がける木彫芸術といえば、精霊「シェタニ」に代表される抽象的でうねるようなフォルムを思い浮かべる人が多いかもしれない。だが今回、マコンデ美術館が光を当てるのは、その対極にあるもうひとつの系譜「ビナダム」だ。

 

 

 

スワヒリ語で「人間」を意味するこの言葉が指し示すのは、畑を耕す人、重い荷を背負って歩く人、顔を寄せ合って言葉を交わす人々。神話的な物語ではなく、東アフリカの大地に根ざした、ごく日常的な営みのひとこまである。

重厚なアフリカ黒檀という素材から力強く、そして大胆に彫り出されたそれらの人物像には、無骨さの奥に確かな体温が宿る。彫刻家たちが人間の暮らしそのものへ向けた、どこか慈しみを帯びたまなざしが、木肌の陰影の中に静かに息づいている。

 

 

 

シェタニの作品群がマコンデ彫刻の「幻想」の側面だとすれば、ビナダムは「現実」の側面。同じ木から生まれた、まったく異なる二つの世界観を知ることで、マコンデ彫刻という表現の奥行きがより立体的に見えてくるはずだ。

遠く離れたアフリカの大地に生きた人々の逞しさは、時代や国境を越えて、見る者の胸をふと打つ。技術と想像力によって命を吹き込まれた木の彫像たちに、会いに行きたい。

 

 

 

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INFORMATION

マコンデ彫刻 ビナダム展 ―アフリカに生きる人々の姿―

日程:2026年11月21日(土)〜2027年2月14日(日)
休館日:火曜日、12月31日(木)〜1月2日(土)
会場:マコンデ美術館
住所:三重県伊勢市二見町松下1799-4
公式サイト:https://museum.makonde.jp/exhibition/

 

About the Museum

マコンデ美術館 —見て、触れて、感じる彫刻の美術館。

前館長・水野恒男氏が長年にわたり蒐集した2,000点を超えるマコンデ彫刻コレクションのうち、約400点を常設展示。ティンガティンガ絵画やアフリカの民族資料も合わせて紹介しており、アフリカの大地が育んだ生命力あふれる造形と出会える場所だ。

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