Gift Story
だれかが私にくれたもの
by 花沢 亜衣
プレゼントについて、しばらくずっと考えている。
JITTERIN'JINNの歌詞を眺めて、「あなたが私にくれたもの」は何だったかをたどりながら、私の場合を思い返したりして。
3歳の娘は、「だれかが私にくれたもの」をひとつひとつ記憶しようという試みをしている。
おばあちゃんからもらった猫のぬいぐるみ。
ママがくれたピンクのボーダーカットソー。
おとうがくれたNIKEのジョーダンワン。
ゆかちゃんがくれたお手紙とシール。
ときおりおまじないのようにそれを唱え、腕いっぱいに抱えてご満悦な表情を浮かべる。
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彼女の10倍以上の時間を生きているなかで、「だれかが私にくれたもの」のすべてを思い出すことは難しくなってしまったけれど、ふとした瞬間に「だれかが私にくれたもの」の記憶に邂逅することがある。
本屋の新刊に並んでいる名前を見て、いつか「好きだと思って」と渡された本の一節が蘇ってきたり、靴ずれで急く帰り道にふとクリスマスにもらったおそろいの青いアディダスのスニーカーのことを思い出したり。
このコラムを書きながらお茶でも入れようかと立ったキッチンで、目があったティースプーンはこのあいだ女友だちが台湾土産にくれたものだ。
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そんなことを考えていたら、私もだれかにプレゼントをあげたくなってきた。
出会えたことのよろこびを感じられて、近くにあるだけで気分がよくなって、思い出すと気持ちがほころんで、大切なあの子にも教えてあげたくなる。そして、昔からの親友のように一緒に時を重ねたくなるような。
「だれかに贈るプレゼント」を見つけるべく、いろいろな人のおしゃべりに耳を傾け、訪れたことのない遠くの世界に思いを馳せるのだ。プレゼントのヒントはそこかしこにあるはずでしょう?
プレゼントについて考える時間というのは、私たちに与えられた至極贅沢な時間なのだ。