矢吹直子さんに聞く、ギフトの思い出

矢吹直子さんに聞く、ギフトの思い出

松屋銀座で広報を務める矢吹直子さん。長年、百貨店という場所で、贈り物を購入する方々を見つめてきた矢吹さんは、ギフトに対してどんな想いや選び方の極意があるのでしょう?ギフト選びをするお客様でにぎわう12月、ギフトにまつわるお話をお聞きしてきました。

 

 

ギフトは情報発信の一つ。発見を贈りたい

 

百貨店の広報として、さまざまな逸品に触れ合うことが多い矢吹さんにとって、ギフトは「情報発信の一つ」なのだそう。どんなふうにして選ぶことが多いのかたずねてみました。

  

「美味しいものや魅力的なものを贈り、『知らなかった!ありがとう』と言ってくださると、『発見』を提供できたなとすごく嬉しいんです。会食などで人にお会いするときに手土産を持っていくことも多いのですが、最近はSNSやWEBにもたくさんの情報があるので、みなさんも本当にいろいろなものをご存知なんですよね。そんな中でも『発見』を提供したいので、目にしたことがないようなものや限定のものを選ぶことが多いです。

広報という仕事柄、まだ知られていないような逸品を知ってもらったり、ものの奥にあるストーリーも一緒に知ってもらいたいという気持ちがあります。珍しいものやストーリーがあるものだと、渡すときの会話のきっかけにもなるので。そういう意味で、ギフトはいいものを伝えるための情報発信ツールでもあるのかなと感じています」

 

ナーディルギュル「バクラヴァ」。松屋銀座限定缶

 

贈る方に「発見」も一緒に届けるようなギフトを探すために、日々、アンテナを張りながら探しているという矢吹さん。お勤め先である松屋銀座の店頭を巡り、探すことも多いのだそう。

 
「店頭を歩いて探したり、バイヤーの方々と話をしたりして、情報をキャッチしています。人と被らない珍しいものを贈りたいので、季節限定品は特にチェックしています。

オンラインで買うこともできる時代ですが、やっぱりお店で実際に見たり、お店の方と話すことで出会えるものはたくさんあります。今の季節だとアドベントカレンダーやクリスマスコフレがたくさん並んでいるので、どこのがいいかなと探すのが楽しい。

やっぱり自分が楽しまないと、いいギフトには出会えない気がするんですよね。『なんかあげなきゃ…』という億劫な気持ちで探してもなかなかいいものには出会えない。楽しみながら探すと素敵なものに出会える気がします」

 

 

日本の工芸品、地域に根付いた逸品

 
つねに楽しみながらギフト探しをしている矢吹さんに、最近気になるギフト、おすすめのギフトを教えてもらいました。

 

ナーディル・ギュル「バクラヴァ」


「珍しいものというところでいうと、トルコの伝統的なお菓子バクラヴァ。フランス菓子などは日本で手に入るものがたくさんありますが、中東のお菓子はまだまだあまり知られておらず、今後注目されるんじゃないかなと思っています」

 

 松屋銀座の地域共創プロジェクト×青森県黒石市が生んだ佐藤卓氏デザインによる新しい津軽こけし「ルビンのこけし フレンド」

 

「日本産のもの、日本伝統工芸品にも注目していて、これは佐藤卓さんにデザインしていただき、青森の津軽こけし職人さんがつくっている『ルビンのこけし』です。日本のものづくりには魅力的なものがたくさんあるのですが、担い手不足で失われつつあるんです。そういうものを知っていただきたいという思いもあり、最近は積極的に日本の逸品を選ぶようにしています」

 

銀座文明堂 銀座の蜂蜜カステラ・バームクーヘン詰合せ


銀座で働いていることもあり、銀座をキーワードに選ぶことも多いといいます。松屋の近くのビルの屋上でとれるハチミツで作ったお菓子や銀座の名店の味を自宅で気軽に食べられる冷凍食品など。縁のある地域に根付いたアイテムを選ぶことで、会話やコミュニケーションが広がることも多いのだそう。

「地域に根付いた逸品を贈る文化っていいですよね。例えば浅草だったら『徳太樓』のきんつばとか、向島だったら『志”満ん草餅』の草餅とか『長命寺』の桜もちとか。並ばなくてはいけなかったり、予約が必要だったりもするのですが、その方のことを思って行動を起こしているので、気持ちがないと手に入らないもの。相手に喜んでもらいたいという気持ちが感じられるものは、もらうと嬉しいですし、そういうものを選ぶようにしたいなといつも考えています」

 

 

ギフトがもたらす季節ごとのコミュニケーション

 

お話を聞いた12月は、ちょうどお歳暮選び、クリスマスギフト選びの真っ只中。それが終わるとお年賀、バレンタイン…とギフトにまつわるイベントが続きます。イベントごとにさまざまなギフトを提案し続けている百貨店で働く矢吹さんだからこそ見えるギフト観の変化もあるようで…

「日本にはクリスマスやバレンタイン、誕生日のほかにも、お中元、お歳暮、お年賀といったギフトを贈る習慣が季節ごとにあります。お中元、お歳暮、お年賀などはダウントレンドとは言われているのですが、お世話になっているけどあまり合う機会のない方にコミュニケーションをとる機会として今も続いています。以前は会社ごとに一括で送り合うようなことが多かったのですが、最近は一人一人に選んで送るような方も珍しくありません。『お元気でいますか?』『私は元気ですよ』というメッセージにもなるので素敵な習慣ですよね。

不思議なもので、12月25日まではクリスマスムード一色なのに、12月26日になると、お年賀のモードになるんです。そうやって季節ごとにギフトを贈ることを楽しめるのってすごく豊かなことだなと感じています」

 

 

ギフトを通してあたらしい世界に出会える

 

 

ギフトを贈ることの喜びを知り、伝えている矢吹さんですが、周りにもギフト上手な方々がたくさんいらっしゃるよう。印象に残っているギフトを聞いてみると、観葉植物とカーテンという意外なアイテムが挙がりました。

 

「引っ越したばかりの家に大きな観葉植物をいただいたときはすごうれしかったですね。植物なので生きていて、日々表情が違うし、照明をあてたり、位置を動かしたりして、部屋の印象も変えることができる。なにより、目に入るたびにくださった方のことを思い出せるのがうれしくて。

同じ頃に、『NUNO』の須藤玲子さんからレースのカーテンもプレゼントでいただいたのですが、部屋に見に来てくれて、つけてくれたんです。お2人とも実際に部屋を見てくださり、これが合うなというのをそれぞれのセンスで選んでくださったのがすごくうれしかったです。なんだか、縁起がいい気がします。一生もののアイテムをいただきました。

素敵なものをいただいたことがきっかけで、部屋をおしゃれにしたいという思いが強くなり、自分でもインテリアに凝るようになりました。自分の趣味だけだとどうしてもワンパターンになってしまうのですが、そうやってギフトでいただくことで、冒険できたり、新しい世界に出会えたりすることはありますよね」

 

ものを贈るだけではないギフトの楽しみを知る矢吹さんに、最後にギフトがもたらす価値を聞いてみました。

 

「ギフトを贈ることで通じ合える気持ちがあるので、コミュニケーションの一つだと思うんです。

贈り物を渡すとき、最近は減ってきていると思いますが『つまらないものですが』と言うことってありますよね。もちろんそれは謙虚さからくる言葉ではあるのですが、そうじゃないよなと思っていて。『こんなに興味深いものなんだよ』と言って贈りたいんです。銀座でとれたハチミツのお菓子でね…、青森の職人が作るこけしでね…、あなたに似合いそうだと思ってね…と、ギフトに一言添えられるような物選びをしたいなと心がけていますし、これからも続けていきたいですね。」

 

 

プロフィール

矢吹 直子

株式会社 松屋 広報部 部長

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