宅間頼子さんに聞く、ギフトの思い出

宅間頼子さんに聞く、ギフトの思い出

 

世界のトップブランドでの要職を歴任し、独立後は企業のブランディングやPR、コンサルタントとして第一線で活躍。「ギフトは最上のコミュニケーションツール」と語る宅間頼子さんにギフトの思い出、贈るときの極意を聞いてみました。

 

 

気遣いを感じられるギフトが心に残る

 

デザイナーやセレブ、さまざまなクリエイターとの交流もある宅間さんは、打ち合わせや食事の際に、小さなギフトや手土産を贈り合うことも多いのだそう。その際、彼女が重視するのは、相手の好みや状況に合わせて選ぶこと。

 

「お仕事をよくご一緒する編集や広報の人は新しいものへ感度が高いので、ちょっと珍しいものを贈りたいですよね。例えば、なかなか手に入らない[村上開新堂]のクッキー缶や、11月だけの[松島屋]の新栗蒸し羊羹のような季節限定の品を贈ったり。はじめてお会いする人には自己紹介を兼ねて私の手がけるヴィーガンカフェの[8ablish]のお菓子を贈ることも多いですね。

でも、やっぱり一番大切なのは相手への気遣い。贈る方の好みや状況を考えて選ぶようにしています。多忙な方にはリラックスできるアロマキャンドルやバスソルトを、体調管理している人には食べ物じゃないものを、ホームパーティにはみんなで楽しめるシャンパンを…と、相手が喜んでくれるものはなんだろう?と、いつも考えるようにしています」

 

宅間さんご自身も、気遣いや心遣いを感じられるようなギフトを受け取ると、その人の人柄や思いに触れ、心に残ると言います。周りのご友人や仕事関係の方からもらうギフトを参考にすることも珍しくなのだそう。

 

「周りの友人や仕事関係の人たちもギフトセンスがいい人が多いので、意外なものや心遣いを感じるものに出会えたら、他の人へのギフトの参考にさせてもらうこともあります。そうやって嬉しかったことを、また別に人に伝えていけたらいいなと思っています」。

 

 

自分の状況や好きを思ってくれるギフトがうれしい

 

 

「これまでもらったギフトで思い出深いものはなんですか?」とたずねると、2年前にスタッフからもらった花瓶を紹介してくれました。

 

「私、花が好きなんですよね。花があると気持ちが華やかになるので、なにもない日でも花を飾っています。それを知っているスタッフがみんなでお金を出して買ってくれたのがこの花瓶です。

自分だと建築的なデザインのものを選びがちでこういう民藝っぽいものは選ばないのですが、サイズ感もかたちもよくて。使ってみたらしっくり。いろいろなお花が素敵に飾れるし、インテリアにも合って気に入っています。私が花を好きなことを知って選んでくれたんだろうなと、みんなの気持ちがうれしかったですね」。

 

ころんとしたフォルムと手仕事を感じる花瓶。花を生けるたびにスタッフのみなさんからの思いも感じられ、より特別なものになっているよう。そして、日頃からお花が好きだという宅間さんにとって、お花もギフトの選択肢のひとつ。お花のギフトに関するこんなエピソードも話してくれました。

 

「2年前に家族が亡くなったのですが、その2週間後ぐらいに友人としても親しくしている仕事関係の人と打ち合わせがあったんです。待ち合わせ場所に行ったら、大きな花を抱えてきて、私にくれたんです。それはデルフィニウムなど淡い色の小さな花が束ねられた優しい雰囲気の花束でした。

突然のことだったので驚いていると、『残念だったね。少しでも気持ちが癒えますように』と言ってくれて。もちろんよく知っている仲だからできたことではあると思うのですが、さりげない心遣いだったので、嬉しかったし癒されました」。

 

 

ギフトがつなぐ想いとコミュニケーション

 

 

ギフトを贈ったり、もらったりして心を通わせるエピソードが次々に出てくる宅間さん。そこには“モノ”以上の価値や意味があるよう。

 

「ギフトというのは、最上のコミュニケーションツールだと思うんです。相手を思う心の表現でもある。いただくモノがどうこうというよりも、そこから気遣いを感じられることがうれしいんです。モノより気持ちがうれしいというのは、年齢を重ねるうちに気づけたことかもしれません。そういう意味では、贈り物に添えられているメッセージや手紙がとてもうれしい。

2年前に引っ越しをしたときに、荷物を整理していたらいろんな手紙が出てきました。会社を辞めた時に後輩からもらった手紙、誕生日のメッセージカード、留学していた時に父から送られてきたエアメール。何十年振りに見返して、こんなことを思ってくれたんだと懐かしくて。もらった当時はそこまで深く考えていなかったけど、一通一通の手紙に想いを感じましたね」

 

 

想いや気持ちをギフトやメッセージカードに込めることで、時間を超えて届くちからもありそう。そんなことを考えていたら、こんな素敵なエピソードをお話してくれました。

 

「この時計は父が自分のお母さんのために買ってきたものなんです。祖母が80歳を超えた頃、『もう時計をつけないからあげるわ』と譲り受けました。時計を身につけていると父のこと、祖母のことを思い出します。ギフトというのは、もらったときの思い出も全部つながっている感じがします。自分で買ったものとはちがう、贈り物だからこその意味があるというか。

家族のように親しい間だと、気恥ずかしくて自分の気持ちを言えないけど、ギフトを通してだと、感謝だったり愛情に素直に向き合えたり、伝えることができるかもしれない。自分もそういう贈り物をできるようになりたいですね」。

 

 

プロフィール

宅間頼子

1965年生まれ 青山学院大学文学部英米文学科卒。卒業後大手ホテルチェーン、フレグランスメーカーの日本総代理店勤務を経て、2001年ゼニア・ジャパンに入社、宣伝広報部広報担当スーパーバイザーとして3年間勤務。2004年、グッチ・グループ・ジャパンの新設部署、グループ・アドバタイジング部にてディレクター職、イヴ・サンローラン・ディビジョン、コミュニケーション・ディレクターとして勤務。2010年トッズ・ジャパン、コミュニケーションズ・ジェネラル・マネージャー、2013年同社代表取締役副社長に就任。2016年6月トッズジャパンを退社し、「日本の卓越した職人の技やカルチャー、食、アート、ファッションを海外に紹介する事業を手掛る」という長年の夢を実現し、株式会社エイプリル設立。2018年6月〜2023年5月株式会社ナルミヤ・インターナショナル社外取締役、2018年7月〜2020年6月特定非営利活動法人ジャパンハート理事、2020年株式会社アポロアンドチャーカンパニー代表取締役、株式会社エイタブリッシュ取締役就任、現在に至る。

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