庭のこと

庭のこと


日々のアトリエに向かう前に、ふと自宅の庭に出ることがあります。

ほんの短い時間でも、草木の気配や風の匂いにふれると、肩の力がふっと抜けるような気がして。

この庭は、僕にとってそういう場所です。

 

(先日の子どもの日にて。毎年の鯉のぼりは私も楽しみにしています。)

 

この庭には、私の幼少期に祖父が贈ってくれた梅の木があります。他にもミモザや金木犀、柚子やいちじく、そしてレモンの木も。季節が巡るたびに、それぞれが違う表情を見せてくれるのが楽しくて。

春には花が咲き、初夏には青々とした葉が光を受けて揺れるのを眺めたり。そんな時間の中で、なんとなくヒントをもらえることがあります。仕事で立ち止まったときも、この庭を歩くだけで不思議と心がほぐれたり。

いくつかの木がある中で実はレモンの木は、一度も実をつけたことがありません。

 

(写真中央の葉がついていないのがレモンです。ガリガリ過ぎてピントも合いません。。)


でも、理由ははっきりしていて――毎年、アゲハ蝶が卵を産みにやってきて、その幼虫がレモンの葉をきれいに食べ尽くしてしまうんです。

普通だったらがっかりするかもしれませんが、なぜかうちに来るアゲハ蝶たちは人に警戒心がなくて、鼻先をかすめるように飛んできたりする。それがかわいらしくて、いつしか愛着が湧いてしまったんですよね。


「レモンの木は、アゲハ蝶のマンションになってるんだ。美味しがってもらってる!」

そんなふうに思って、もう実がならなくても気にしないことにしています。

実際、レモンがなくても庭は十分に豊かで、毎年の訪問者を迎えられることこそが嬉しいなと感じています。

 

この子は既に葉がなくなっているレモンの木で呆然としていたので、二本隣の柚子の木に引っ越させました。柚子でも良いみたい。)


ものづくりの根っこって、こういうところにもあるのかもしれません。

目に見える成果だけを追いかけるんじゃなくて、そこにある時間や過程を愛おしむ。

庭の木々や蝶たちが教えてくれた、そんな気づきの話でした。

 

(ガリガリになったレモンの木を眺めていたら、その脇にアップルミントが大きくなっていたので炭酸水に入れて飲みました。人生ってこういうことで良いのかも。)

RuffRuff Apps RuffRuff Apps by Tsun

Recent post